2019 Fiscal Year Research-status Report
水晶振動子マイクロバランス法による食用油脂の品質評価
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18K05482
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
遠藤 泰志 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (60194049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村松 宏 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (20373045)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水晶振動子 / 油脂 / 脂肪酸 / グリセリド / 粘度 / 共振抵抗 |
Outline of Annual Research Achievements |
水晶振動子センサーを油脂の品質評価に応用したところ、植物油の種類により共振抵抗値が異なった。植物油の構成脂肪酸の種類によって共振抵抗値は異なり、構成脂肪酸の二重結合数が増加するにしたがって、共振抵抗値は減少することを観察した。とくに植物油のヨウ素価と共振抵抗値との間に負の相関が見られた。このことから、植物油の品質評価に本水晶振動子センサーが利用できることが示唆された。 また、水晶振動子センサーを各種脂肪酸とその誘導体に応用したところ、遊離脂肪酸で共振抵抗値が高く、逆に脂肪酸エステルで共振抵抗値が低くなることが観察された。しかし、不飽和脂肪酸の幾何異性体の共振抵抗値に差は認められなかった。また、モノ、ジ、トリグリセリドの共振抵抗値を比較したところ、グリセリド構造の違いで、数値が異なり、モノグリセリドで高い共振抵抗値を示した。このことは、脂肪酸誘導体の共振抵抗には、カルボキシ基や水酸基の官能基が大きく影響することが分かった。 一方、脂肪酸誘導体の粘度を測定したところ、脂肪酸エステルに比べて遊離脂肪酸で粘度が高い値を示した。とくにグリセリドは粘度が高く、トリグリセリドで脂肪酸より高い粘度を示した。これら脂肪酸誘導体の粘度と共振抵抗値との間には高い正の相関が見られた。 以上の結果から、水晶振動子による脂肪酸誘導体の物性評価に有効であることが示されるとともに、油脂の分解反応や脂肪酸エステルの合成反応のモニタリングに本水晶振動子センサーが利用できるのではないかと期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水晶振動子センサーを用いて各種脂肪酸誘導体の共振周波数並びに共振抵抗値を測定した結果、脂肪酸誘導体の種類によって、共振抵抗値が異なることを見出した。とくに遊離脂肪酸で共振抵抗値が高くなることを見出し、共振抵抗にカルボキシ基が大きく関与していることを認めた。さらにグリセリド構造の違いによっても共振抵抗値が異なり、モノグリセリドおよびトリグリセリドで共振抵抗値が高くなることを見出した。これらの結果は、グリセリドの水酸基とグリセリドの分子量が共振抵抗値に大きく関与していることをはじめて認めた。 また、脂肪酸誘導体の粘度を測定した結果、水晶振動子センサーによる測定で得られた脂肪酸誘導体の共振抵抗値と高い正の相関があることを認め、水晶振動子センサーが油脂関連化合物の品質評価法として有効であるデータを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪酸誘導体の種類によって、水晶振動子センサーによる共振抵抗値が異なることから、油脂の加水分解反応や脂肪酸エステルの合成反応のモニタリングに本水晶振動子センサーが利用可能であることが示唆された。 そこで今後の研究として、油脂の消化性を評価するために、リパーゼによる油脂の加水分解反応について、水晶振動子センサーを用いて経時的に反応物を測定する。またバイオデイーゼルに用いられる脂肪酸メチルおよび脂肪酸エチルの合成において、リパーゼを用いた酵素的合成反応を行い、水晶振動子センサーによる反応物の測定を行う。 以上より、上記の酵素反応のモニタリングに、本水晶振動子センサーの有効性を評価していく。
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Causes of Carryover |
購入予定していた試薬が現在製造されていないため、購入ができなかった。次年度に、代替の試薬の購入に充てるとともに、脂肪酸エステル合成に必要な酵素や試薬が高価であることから、それらの試薬の購入に使用する予定である。
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