2018 Fiscal Year Research-status Report
Construction of strategy to remedy dysbiosis state using in vitro human colonic microbiota model
Project/Area Number |
18K05487
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐々木 建吾 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 特命准教授 (50558301)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 奈美子 神戸大学, 医学研究科, 助教 (40645214)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | Ulcerative colitis / Gut microbiota / In vitro model / Butyrate / Lachnospiraceae |
Outline of Annual Research Achievements |
潰瘍性大腸炎は、大腸内側の粘膜に炎症が起きる事でびらんや潰瘍ができる病気であり、再発する場合が多い。潰瘍性大腸炎患者の腸内細菌叢は、健常人と比べて構成が異なっている事(dysbiosisと呼ばれている)が知られている。しかし、患者の腸内細菌叢を是正する事は容易ではなく、その評価系の構築が求められていた。我々は高性能ヒト腸内細菌叢培養装置を世界で初めて構築し、健常人の腸内細菌叢種を網羅したモデルを構築してきた。そこで本研究においては、潰瘍性大腸炎患者のヒト大腸細菌叢モデルを構築し、dysbiosisを是正する候補投与物を探索する事を目的とした。 潰瘍性大腸炎患者の臨床検体(糞便)を使用して、モデルを作成した。その結果、潰瘍性大腸炎患者モデルは健常人モデルと菌叢構造が異なっており、特にLachnospiraceaeに関連する菌の割合が有意に減少していた。この結果は、臨床検体で得られた結果と一致していた。すなわち、潰瘍性大腸炎患者のdysbiosis状態をIn vitro系内に再現する事に成功した。また、潰瘍性大腸炎患者モデルは健常人モデルと比べて、酪酸生成量が有意に減少している事を世界で初めて明らかとした。酪酸は大腸抹消由来Treg(制御性T細胞)分化の促進活性を有している事が知られており、潰瘍性大腸炎患者ではTreg細胞数が減少している事が示唆された。何よりも、潰瘍性大腸炎の病勢pMayoスコアが高い患者からpMayoスコアが低い患者に至るまで、一律にLachnospiraceae科に関連する菌の割合が腸内細菌叢において低かった。すなわち、潰瘍性大腸炎患者はpMayoスコアの違いに関わらず、腸内細菌叢はdysbiosis状態が継続されており、本疾患が再燃・寛解を繰り返す事と腸内環境異常が関与している事が示唆された。候補投与物の添加効果については以下で述べる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
我々は潰瘍性大腸炎患者のヒト大腸細菌叢モデルをin vitro系内に再現する事に世界で初めて成功し、酪酸生成の減少を観察した。酪酸はヒト腸管内では吸収されてしまうが、in vitro系内では吸収されないため本モデルにおいて酪酸生成の傾向を検出する事が可能となった。既報により潰瘍性大腸炎患者は低級脂肪酸の生成が減少する事が知られており、本結果は既報と一致する。 現在、医療の現場において潰瘍性大腸炎に対しては5-アミノサリチル酸製剤が治療薬として用いられている。しかし患者は治療薬の投与に関わらず、腸内細菌叢のdysbiosis状態が継続されている事を我々の結果は示唆してきた。そこで腸内細菌叢を改善するプレバイオティクスを投与する事は、治療薬の効果を補完する処方として期待される。一方、腸炎モデルのラットに対してClostridium butyricum MIYAIRIを投与する事が、ラット腸内の酪酸産生を増加させる事が知られている。そこで、我々が開発した潰瘍性大腸炎患者のヒト大腸細菌叢モデルにC. butyricum MIYAIRIを投与した。その結果、酪酸生成が改善されており、C. butyricum MIYAIRI投与の有用性が示された。潰瘍性大腸炎に対して効果的な投与物を得ているため、当初の計画以上に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
潰瘍性大腸炎患者の腸内細菌叢は酪酸生成能が低下している事が明らかとなった。そこで、酪酸生成関連の遺伝子に着目して、解析を進める。 候補投与物はヒトへの内服が可能である。そこで、潰瘍性大腸炎患者に対して効果の認められた添加物を内服し続けてもらい、腸内において発酵プロファイルの変化が認められるか確認する。将来的に、患者の治療戦略構築に役立てる。
|
Causes of Carryover |
想定以上に研究が進捗したため。
|
Research Products
(5 results)