2020 Fiscal Year Research-status Report
急性期脳梗塞における腸管T細胞の影響とプロバイオティクス治療応用の検討
Project/Area Number |
18K05492
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
山城 一雄 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (00348921)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / 脳梗塞 / 糖尿病 / Tリンパ球 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管は最大の免疫器官であり、腸内細菌は腸管の制御性T細胞やγδT細胞、Th17細胞など免疫細胞の分化制御に密接な関わりを持っている。しかしながら腸内細菌叢の異常が、どのように腸管のT細胞の分化制御に影響し、さらには急性期脳梗塞の病態に関与しているかについては、未だ明らかでない。私たちは糖尿病マウスを用いた先行研究において、腸内細菌叢の異常が脳梗塞急性期の組織障害に関与することを明らかにしている。本研究では糖尿病マウスにおける腸内細菌叢異常と腸管の免疫細胞への関連に着目し、脳梗塞急性期の病態について解析を行うことを目的とする。 C57BL6マウスに高脂肪食(high fat diet: HFD)を投与して糖尿病を発症したマウスと、低脂肪食(low fat diet: LFD)を投与した正常血糖マウスの2群を作成した。これらのマウスを用いて一過性中大脳動脈閉塞(tMCAO)による脳梗塞を作成したところ、tMCAO72時間後ではHFD群で有意に神経症状の重症度が高かった。 また腸管リンパ球による脳梗塞への影響を調べるために、マウスの腸管の粘膜固有層に存在するリンパ球についてフローサイトメトリーによる比較を行った。HFD群ではLFD群と比較して、小腸のインターロイキン(IL)-17産生性CD4陽性Tリンパ球(Th17細胞)が有意に増加していたが、一方で大腸では明らかな差は認めなかった。γδT細胞は小腸および大腸ともに両群に差はみられなかった。Th17細胞は炎症性サイトカインを分泌し、感染症への防御機構として働く一方で、その過剰活性化は炎症性腸疾患や関節リウマチなどの自己免疫性疾患の発症や増悪に密接に関与していることが示されている。現在までの解析結果より、HFDによる糖尿病マウスでは脳梗塞後の神経症状が重度であり、また腸管においてはTh17細胞が増加していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた計画通りに、順調に解析が進んでいる
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Strategy for Future Research Activity |
今後は脳梗塞組織におけるTリンパ球の関与についてフローサイトメトリーによる解析を行うとともに、炎症性サイトカインの発現についてはELISAなどを用いた解析を予定している。またマウスの腸内細菌叢解析を行うとともに、プロバイオティクスを投与して腸管免疫細胞の制御を介した脳梗塞急性期における脳保護効果についても検討を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、研究が一時的に中断したため
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