2018 Fiscal Year Research-status Report
三陸沿岸の幼児の栄養素と微量元素摂取量に及ぼす津波被災の長期的影響に関する研究
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18K05496
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
千葉 啓子 岩手県立大学, その他部局等, 特任研究員 (90197137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 孝男 東北文教大学, 人間科学部, 教授 (20004608) [Withdrawn]
猿渡 英之 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (30221287)
中塚 晴夫 金沢学院短期大学, 食物栄養学科, 教授 (70164225)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 微量元素摂取量 / ミネラル摂取量 / 保育園給食 / 津波被災地 / 長期的影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
日常の食事を介して摂取する栄養素、とくに微量元素やミネラル類の多くは、日本人、なかでも幼児の摂取量に関するデータがいまだ少なく、それらの食事摂取基準値は日本人以外から得られた摂取量のデータをもとに検討されている場合が少なくない。食事中の実測値を求め、基準値の妥当性を検証することは重要と考える。また、東日本大震災・津波により被災した沿岸地域の幼児において、微量元素・ミネラルの食事からの摂取量に対する、被災から現在に至る長期的影響の有無や影響の程度について明らかにすることも本研究における喫緊の課題であり、かつ本研究の目的である。 陰膳食事調査は沿岸地域での結果を、直接的な震災被害のなかった地域の幼児の場合と比較し、摂取状況の現状把握とともに、被災による摂取状況への影響の有無や影響要因の精査を合わせて行い、長期的影響がみられる場合はそれらへの対応策を検討し、幼児の食生活の改善に取り組むこととした。平成30年には、被災した岩手県沿岸地域の公立・私立保育園(所)やこども園の協力を得て、給食調査を実施した。対照群の給食試料は、共同研究者の渡邊が平成27~29年度科研費研究により山形県内で調査した保育園給食を用いた。①陰膳食事調査の計画と実施:同意が得られた三陸沿岸の2つの市と町の保育園・こども園7か所を対象に連続3日間の給食を献立表と共に回収した。給食は食品毎に秤量したのち、ミキサーで均一に粉砕して分析前処理(灰化)用の食事試料を調製し、灰化作業まで-30℃で保存した。渡邊が凍結保存していた山形県内19か所の保育園(所)給食も同様に粉砕均一化した。②データの集計:調査群(岩手県沿岸地域)及び対照群(山形県内)給食の献立表の秤量値による栄養価計算と栄養素等摂取量及び食品群別摂取量の集計を実施しており、これに基づき、栄養素等摂取量、食品群別摂取量のデータベースを作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度の研究進捗状況を(3)やや遅れているを選択した理由として、以下の2つがあ挙げられる。 ①協力保育園(所)の決定まで、想定したより交渉時間を要したこと ②微量元素・ミネラル類の食事中実測値を得るための食事試料の前処理を担当していた共同研究者渡邉(元東北文教大学)の死去により、前処理作業が中断したこと ①については、研究開始当初に沿岸地域で栄養士業務を担当している本学部卒業生にヒアリングを実施し、十分、現状を認識したうえで、さらに保育園(所)との直接交渉ではなく、現場とコミュニケーションが良好な保健所や市役所の担当者から紹介してもらい、協力要請したが、その間の連絡に予想外に時間を要した。協力の了承を得たのちの実施には問題は生じなかった。 ②については、ICP-MSによる微量元素・ミネラルの実測には採取した食事試料を硝酸により灰化し、硝酸液中に溶解させる前処理が必要となる。昨年4月、代表者千葉の実験室に硝酸灰化用ドラフトの移設工事が完成し、硝酸ガスを中和処理できる安全装置を取り付けたもので稼働を始めた。処理のほとんどは技術力の高い渡邉が担当し、安全を確認しながら実験に当たっていたが、昨秋に体調が悪化し、実験を中断せざるを得ない状況となったまま死去した。渡邊が分担していた灰化実験は本研究において外す事の出来ない工程であり、今後外注することや、他の灰化方法に変えることが難しいため、以後、千葉がこれらの作業を担当することとした。現在、精度管理をしながら予備実験を行っているところである。脂肪の多い食事など食事内容の違いにより、酸混和のタイミングや量の判断が難しく、本実験まで至っていないが、早急に開始できるようトレーニングに努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
渡辺(元東北文教大学・人間科学部)が本研究対象のコントロール(対照群)とした山形県内保育園給食が20か所近くであるのに対して、平成30年度に沿岸地域の保育園(所)から採取できた給食数は対照群の半分以下の8件(7施設のうち1施設では2回提供)であり、サンプル数が当初計画した数に満たない状況であることから、共同研究者と協議した結果、当初計画では保育園給食の陰膳調査は初年度の平成30年のみ実施と考えていたが、2年度目の令和元年度にも実施し、協力保育園(所)数を増やし、対照群でのサンプリング数に近付けるよう努めることとした。現在、前年度の調査市町及び近隣の地域で協力要請を再開しており、内諾を得られた保育園(所)もあり、実施に支障はないものと考えている。
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Causes of Carryover |
年度途中で共同研究者の渡邊(元東北文教大学人間科学部・教授)が死去したことにより、担当していた実験が中断したため、それ以降の食事試料の分析実験を分担していた猿渡、分析結果の集計とデータベース作成を担当する中塚も作業ができず、中断している。このため、分担研究費が一部未使用となり、それぞれに残額が生じた。また、渡邊教授の残額については、共同研究者除籍手続きが承認された後、代表者の千葉の研究費に合算され、一部は実験の消耗品購入に充てられたが、最終的に残額が生じた。これらの残額は各自の次年度分へ繰り越された。これらの繰り越し分と一部の次年度助成金は、保育園(所)給食調査費用や灰化作業の再開に伴う使用試薬や器具の購入費用に充てる。猿渡教授と中塚教授は前年度中断した作業を再開させ、それらに掛る費用に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)