2019 Fiscal Year Research-status Report
MIF抑制物質としてのコーヒーポリフェノールは炎症性発癌を抑制するか?
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18K05500
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大川原 辰也 北海道大学, 薬学研究院, 研究員 (00374257)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 宏司 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (60261294)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マクロファージ遊走阻止因子 / クロロゲン酸 / 炎症性発癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージ遊走阻止因子の活性をコントロールすることで他の炎症や発癌に関与する分子が変化することを検証した。マクロファージ遊走阻止因子を欠損させたノックアウトマウスにおいて大腸組織に発生した腫瘍では腫瘍径は小さくなり、単一の腸管からの発生数も少なかった。また、炎症発生および進展とともに野生型マウスではみられる単球系、リンパ球系の免疫細胞の腸管粘膜への浸潤がほとんど見られないくらい抑制されていたが、その後の経過で炎症性発癌を起こした腸管組織の腫瘍部位の根部に単球の浸潤が著明にみられていたのが、ノックアウトマウスのがん発生部位においてはそれらの浸潤の程度の差は有意な差ではなかった。炎症性発癌物質を投与したマウスの腸管においてシクロオキシゲナーゼ発現の程度をタンパクレベルで検証した。COX-1については発現の差は見られなかったが、COX-2においては野生型と比べてノックアウトマウスの腸管組織では発現の抑制傾向がみられた。そして酸化ストレスであり、本モデルにおいて炎症性発癌の補助的な判断基準として用いられるニトロチロシンのタンパクレベルでの発現および局在は、野生型マウスのモデルにおいては腸管上皮および発生した腫瘍に強く発現がみられたが、ノックアウトマウスにおいてはその発現は減弱していた。さらにデキストラン硫酸ナトリウム水溶液およびアゾキシメタンの投与によってマウス大腸組織への誘導が抑制された分子を網羅的に検証し多数の因子について発現の変化が10倍以上の変化であった。現在その中で注目している因子についてそれぞれの発現の再現性を確認している。また、天然素材でありコーヒーポリフェノールとして認識されているクロロゲン酸を腹腔内投与しマクロファージ遊走阻止因子の発現への影響を解析したところマウスにおいてその発現誘導を抑制する傾向がみられた。カフェ酸単独ではその傾向は顕著ではなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では動物試験の進捗が思うように進まなかったが、理由として以下のことが考えられた。本研究で主に用いられるデキストラン硫酸ナトリウム水溶液摂取およびアゾキシメタン腹腔内投与による炎症性大腸癌モデルの誘導において、その炎症性発現を発症させる時間が極めて長期間なため、一回の実験にかなり時間がかかるためと思われた。また実験マウスから採取するサンプルの収集にも時間を要した。そして申請者らが行った本疾患モデルの結果の評価から、コントロール群での炎症性発癌の確率がなかなか安定しないため、設定変更など実験を頻回に繰り返すことが必要となって、そのために結果の評価や確認の進行が遅れた。またコーヒーポリフェノールの、特にクロロゲン酸やカフェ酸投与の至適濃度や至適量についての調整も必要としているため実験の設定に時間を要して、結果的に結果の評価にも円滑さを欠いていた。さらにコーヒーの複数の成分による相乗的効果がないか実験系を設定しておりそれにもやや時間を要していた。
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Strategy for Future Research Activity |
コーヒーポリフェノールの成分が炎症性サイトカインであり細胞増殖因子(腫瘍増殖効果を伴う)としての機能を持つマクロファージ遊走阻止因子の動物の体内での発現に影響を及ぼしていることを、さらにさまざまな方法にて確認し、当初の目的である炎症性発癌(特に大腸発癌)におけるマクロファージ遊走阻止因子の役割をうまくコントロールすることによりマクロファージ遊走阻止因子の病的環境における生理活性の調節が難治性癌疾患である炎症性大腸癌発癌の予防や治療への展開だけではなく、炎症性発癌のコーヒーポリフェノールの成分から眺めた機序の一端の解明も推進する。さらに疾患モデルでの機序解明だけではなくより単純化した細胞で炎症性変化のために加工した培養環境や添加物を工夫してコーヒーポリフェノールの成分の意義について解析を進めていく予定である。さらにマクロファージ遊走阻止因子の活性促進の制御の探索のため、クロロゲン酸を含めたコーヒーポリフェノール成分を添加した際の様々な癌・炎症の関連因子の発現や機能の解析をマウスおよび細胞レベルで進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
動物実験による本モデルでの研究は疾患モデル誘導から結果判定までの時間が大変長期間なため毎回ごとに結果確認を行いながら進めたため、結果的に動物実験回数の頻度が上がらなかった。そのため採取されるサンプルの解析に使う分子生物学用の試薬やキットの使用も少なかったため使用額が少なくなってしまった。次年度において蓄積してきた採取サンプルの解析を大きく進める予定であり、それによって使用される試薬や検査キット等を多数購入する予定でありそれに当初の通りの当該助成金を使用する計画である。さらに計画の一部であるコーヒーポリフェノールの各成分の免疫細胞、上皮系細胞における増殖・炎症関連物質発現の解析と炎症性発癌環境での発現・分泌物質や遺伝子の解析にも試薬やキットを多々使用する計画である
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