2020 Fiscal Year Research-status Report
アルギニンのタンパク質合成促進シグナル分子としての機能解析
Project/Area Number |
18K05501
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
吉澤 史昭 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10269243)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アルギニン / タンパク質合成 / 骨格筋 / S6K1 / 4E-BP1 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、骨格筋をターゲット組織と定めてアルギニンのシグナル分子としてのタンパク質合成調節機能を明らかにすることが目的である。 本年度は、当初の予定では「in vivoの骨格筋におけるアルギニンのシグナル分子としての作用の明確化」を目的として実験を行う予定であったが、昨年度末までにアルギニンのタンパク質合成促進作用がin vivo評価系では確認できていなかったため、実験動物をラットからマウスに変更し、アルギニンの投与方法も経口投与から腹腔内投与に変更してアルギニンのタンパク質合成促進作用をin vivo評価系で再検証した。 6週齢のICR系雄性マウスを18時間絶食させた後、超純水に溶解したアルギニン(L-Arg)を体重100g当たり80mg、あるいは160mg腹腔内投与して1時間後に屠殺した。後肢から長趾伸筋、前脛骨筋、足底筋、腓腹筋、ヒラメ筋を摘出して、アルギニン投与量の変化に伴うタンパク質合成活性の変化を、翻訳開始調節因子(S6K1と4E-BP1)のリン酸化レベルを指標として評価した。その結果、何れの骨格筋においても翻訳開始調節因子のリン酸化レベルの増加は観察されなかった。 初年度の培養筋管細胞(C2C12細胞)を用いた研究で、アルギニンがmTORシグナル伝達系を介してタンパク質合成を促進するシグナル分子として作用することが示されたが、その作用はラットに経口投与したin vivo評価系では確認できなかっただけでなく、マウスに腹腔内投与したin vivo評価系でも確認することはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の目的を達成するために、3つのマイルストーン「1. アルギニンの骨格筋タンパク質合成促進作用の確認とその作用機序の明確化」、「2. ロイシンのタンパク質合成促進作用との比較および相互作用の明確化」、「3. in vivoの骨格筋におけるアルギニンのシグナル分子としての作用の明確化」を設定して研究を進めている。初年度は、培養筋管細胞を用いて項目1と2を中心に研究を進め、アルギニンがロイシンと同様にタンパク質合成を促進する作用を有すること、またアルギニンがロイシンと相加的、あるいは相乗的にタンパク質合成を促進する作用を有することを明らかにした。昨年度(2年度目)は、ラットを用いたin vivo評価系で上記の項目1と2を中心に研究を進めた。その結果、初年度にin vitro 評価系で観察されたロイシンのタンパク質合成促進作用はin vivo評価系でも確認できたが、アルギニンの作用はin vivo評価系では確認できなかった。そこで本年度は、先ず実験動物をマウスに変更し、さらにアルギニンの投与方法を腹腔内投与に変更して、タンパク質合成促進作用をin vivo評価系で再検証した。しかし、アルギニンの作用は確認できなかった。そこで、アルギニンの投与方法を更に検討してin vivoでのタンパク質合成促進作用を検証する予定であったが、コロナ禍の影響で実験の実施が制限されたため、研究を中断せざるを得なくなった。そのため、研究は当初の予定より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的を達成するために、3つのマイルストーン「1. アルギニンの骨格筋タンパク質合成促進作用の確認とその作用機序の明確化」、「2. ロイシンのタンパク質合成促進作用との比較および相互作用の明確化」、「3. in vivoの骨格筋におけるアルギニンのシグナル分子としての作用の明確化」を設定して研究を進めている。初年度は培養筋管細胞を用いたin vitro 評価系を用いて項目1と2を、2年度目以降はラットおよびマウスを用いたin vivo評価系を用いて項目1と2を中心に研究を進めてきた。次年度は本年度に引き続いてアルギニンの投与方法や投与量を再検討して、早急にアルギニンの作用のin vivo評価系を確立して項目3に着手する。また、並行して細胞内アルギニンセンサーであるCASTOR1の発現を、後肢骨格筋(長趾伸筋、前脛骨筋、足底筋、腓腹筋、ヒラメ筋)で確認して、アルギニンの作用が確認できない原因を探る。さらに、アルギニンはmTORシグナル伝達系を介してタンパク質合成を促進することが示されているが、これまでの研究でCASTOR1に依存しないアルギニンのmTORの活性化メカニズムの存在が示唆されているため、そのメカニズムについても調べる予定である。
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Causes of Carryover |
本年度が研究計画の最終年度であったが、コロナ禍の影響で所属研究機関での実験の実施が制限され、研究を中断せざるを得なくなったため、研究が予定通り進まなかった。そこで研究期間を延長して研究を推進することとした。本年度に使用予定であった直接経費の約80%が未使用であるため、この残予算を使用して本年度に実施を予定していた実験を次年度行う予定である。
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