2021 Fiscal Year Research-status Report
食品異物及びカビ伝播の原因となる食菌性昆虫はカビ毒産生能を亢進する
Project/Area Number |
18K05509
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
小西 良子 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (10195761)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 直樹 麻布大学, 生命・環境科学部, 准教授 (90447558)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 食菌性昆虫 / Aspergillus 属 / 放線菌 / カビ毒産生能 / ステリグマトシスティン |
Outline of Annual Research Achievements |
食菌性昆虫は、環境中の真菌(カビ)を栄養源とする微小昆虫であり、ヒメマキムシやチャタテムシ等は食品工場等における食品混入異物やカビ伝播の原因となる。一方カビの二次代謝物であるカビ毒はヒトや家畜に健康被害を起こす食品汚染危害物質である。申請者は食菌性昆虫保有カビのカビ毒産生能が、餌となっている環境中のカビよりも亢進しているか否かを明らかにすることを目的としている。今までの成果から、チャタテムシが餌として好む菌種はPenicillium属であり、その要因として虫の体高よりも低く、口器よりも低い位置で密にビロード状コロニーを発育する形態およびその臭気が関係深いことを明らかにした。また真菌のカビ毒産生性は嗜好性を決める重要な因子ではないことも示唆された。食菌性昆虫はこれらのカビを体表にある貯蔵袋に入れる習性があるが、体表の細菌を調査した結果、放線菌が多く存在していることが明らかとなり、それらは16S rRNA BLASTの結果、Streptomyces olivaceusおよびStreptomyces pactumと同定された。 そこで令和3年度は、これら放線菌が真菌に対してどのような働きをしているのかを検討するため、体表から単離した放線菌とカビ毒産生真菌の共培養を行い、カビ毒の産生能の変化を測定した。カビ毒産生真菌としてはステリグマトシスティンを産生するAspergillus versicolarを用いた。その結果、これらの放線菌は、真菌の増殖には影響を及ぼさないがカビ毒産生能を低下させることが明らかになった。この働きは昆虫が食するカビのカビ毒産生能を体表に共存する放線菌が低下させている可能性を示唆する結果といえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3年間の計画で遂行してきたが、コロナ禍の影響で、カビや放線菌の培養がコンスタントに行われず、常に再現性の取れる状態にすることができなかったことがあげられる。また、カビからのRNA抽出が非常に早く破壊されてしまうため、経時的に採取したカビからRNAを採取することができず、異なる方法によりカビ毒産生能への影響を検討する必要が出てきた。これらの要因により、研究の進捗はやや遅れているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在RNAの抽出がネックとなり、放線菌との共培養によるカビ毒産生能の減少のメカニズムの解明が遅れている。令和4年度は、RNA抽出ではない方法で、カビ毒産生能への影響を解明する予定である。具体的には、共培養により影響を受けるステリグマトシスティンの前駆体を検出し、放線菌の有無による比較を行う予定である。 コロナ禍の影響で学会発表も思うようにできなかったことから、令和4年度は発表を考えている。
|
Causes of Carryover |
令和3年度には 本成果を国際学会に発表を予定していたが、コロナ禍の影響で中止となり、その費用が次年度使用額となった。
|