2019 Fiscal Year Research-status Report
糖化ストレスによる骨機能阻害に対するS. sonchifoliusの効果
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18K05510
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
高部 稚子 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (00436594)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 糖化ストレス / ヤーコン / 骨粗鬆症 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖化反応は、血中の過剰な糖とタンパク質との非酵素的な反応であり、様々なタンパク糖化最終産物(AGEs)が生体内で産生される。AGEsの生成・蓄積はタンパクの機能不全や炎症惹起に関わることから、近年、疾病予防のターゲットとされてきた。特に糖尿病は、慢性的な高血糖の結果AGEsの蓄積が亢進していると考えられており、糖尿病関連疾患とAGEsに関する報告が多くなされている。AGEsが生体に与えるストレスを糖化ストレスと呼ぶ。 骨は通常、骨芽細胞による骨新生と破骨細胞による骨破壊のバランスが保たれており、このバランスが崩壊することによる骨質・骨量の低下は骨折の危険因子となる。これまで骨粗鬆症やそれに伴う骨折は、加齢によるホルモンバランスの崩壊が要因であると考えられてきたが、それ以外にも糖尿病患者に骨折の罹患率が健常者と比べ高いこと、骨折部位の骨コラーゲン中に架橋性AGEsの一種であるペントシジンの蓄積が認められていること、ペントシジンによる骨コラーゲン中の不要な架橋形成が骨の弾性低下に繋がることが報告されていることなどから、糖化ストレスが骨機能に与える影響について研究がなされてきた。申請者らはその中でも、AGEsが骨芽細胞・破骨細胞分化に与える影響について培養細胞を用いた研究を行ってきた。 本課題では、糖化ストレスが破骨細胞分化に与える影響に対するヤーコンの有用性について明らかにすることを目的としている。ヤーコンは申請者らが500種類以上の食用植物の中で強いAGEs産生抑制・分解亢進作用を有する植物として見出した植物であり、本課題においてペントシジン産生抑制有用成分並びに、AGEsとタンパク質との架橋を切断する成分を同定した。また、AGEsが破骨細胞分化を抑制するメカニズムに着目し、ヤーコン抽出物はそのうちの、特に細胞融合に関与する遺伝子発現の低下を回復させることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題におけるH31(R1)年度の計画を予定通り遂行した。 破骨細胞分化は、主に前駆細胞からのTRAP陽性細胞への分化と、その後の細胞融合による多核化からなる。マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞にReceptor activator of nuclear factor kappa-B ligand (RANKL)を作用させた破骨細胞分化モデルにおいて、分化過程に上昇する複数の遺伝子発現及び、成熟した破骨細胞の特徴であるTartrate-resistant acid phosphatase (TRAP)活性の上昇がAGEsの添加により低下することは前年度までに示していたが、今年度は特に破骨細胞分化の主要転写因子とされるNFATc1及びMitF-Eについて検証した。その結果、どちらの転写因子もAGEsにより抑制されることが示された。RNA干渉(siRNA)法を用いMitF-Eの発現を50%程度抑制すると、TRAP活性の低下及び細胞融合に関する遺伝子の抑制がみられた。更にヤーコン抽出物の破骨細胞分化に与える影響について検証を行った。結果、AGEsにより発現が抑制されるRANKL誘導性遺伝子のうち、MitF-E発現を抑制した際に低下した、つまりMitF-Eによって制御される遺伝子については、ヤーコン抽出液添加による有意な回復が認められたが、それ以外の遺伝子に関しては顕著な効果は見られなかった。現在、MitF-Eの発現メカニズム解析及び、ヤーコン抽出液の作用点を進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、転写因子MitF-E及び、MitF-Eによって制御される細胞融合関連遺伝子の発現メカニズム解析を行う。更に、AGEsによる細胞融合関連遺伝子の発現低下をヤーコン抽出液が回復できるという点について、作用点の解明を目指している。MitF-Eを抑制するとTRAP活性が有意に抑制されることから、少なくともTRAPは一部MitF-Eの制御を受けているものと考えられるが、ヤーコン抽出液はAGEsにより低下したTRAPの遺伝子発現レベルを回復させることはできなかった。そのため、ヤーコン抽出液の作用点はMitF-E発現と細胞融合関連遺伝子発現との間にあるのではないかと考えている。しかしながら、TRAPに関しては遺伝子発現だけでなくタンパク発現、活性測定も併せて評価する必要があり、今年度の検討課題としている。また、昨年度はヤーコン抽出液の効果について検証したが、我々は既にヤーコン抽出液に含まれるAGEs産生抑制作用を有する成分である2,3,5-トリカフェオイルアルトラル酸(TCAA)を同定している。ヤーコンが示す効果に対するTCAAの寄与についても検証する。更に、これまで破骨細胞分化マーカーとして使用される遺伝子の発現レベルや、TRAP活性を破骨細胞分化の指標としてきたが、最終的には破骨細胞による骨吸収を評価基準としたいと考えている。骨吸収評価は、象牙切片あるいはリン酸カルシウムを固相化したプレートを用いpit formation assayにより行う。本年度が最終年度であり、糖化ストレスが破骨細胞分化に与える影響に対するヤーコンの有用性について包括的な知見を得ることを目的とし、研究を進める。
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