2019 Fiscal Year Research-status Report
Molecular interaction of theaflavins with phospholipids
Project/Area Number |
18K05525
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
中山 勉 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (50150199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奈良井 朝子 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 准教授 (00339475)
植草 義徳 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (30753024)
飯嶋 益巳 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (40390728)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | テアフラビン類 / カカオポリフェノール / 柿ポリフェノール / 脂質膜 / リポソーム / NMR / リン脂質 / 分子間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
紅茶の赤色色素であるテアフラビン類(TF類)をはじめとして、カカオポリフェノール、柿ポリフェノールなどは、ポリフェノールの重合体であり、難吸収性ポリフェノールとも呼ばれ、腸管から吸収されないにもかかわらず経口摂取後短時間で生理作用が発現することが知られている。 いままで口腔・胃・腸管上皮細胞などの細胞膜のモデルとして、リン脂質から構成されるリポソームにTF類を作用させると、いずれのTF類も沈殿を形成することを明らかにしてきた。今回は試験法の少量化に成功し、様々な難吸収性ポリフェノールによる沈殿形成の濃度依存性を比較した。その結果、カカオポリフェノールおよび柿ポリフェノール>TF類>カテキン類の順で沈殿形成作用が強いことが明らかになった。また、リン脂質膜二重層にTF類を作用させた時に生じる脂質膜の構造変化を可視化するため、原子間力顕微鏡(AFM)による解析を行ったところ、TF類によって異なる結果が得られた。 テアフラビン類とリン脂質膜との分子間相互作用メカニズムを解明するため、モデルリン脂質二重膜(バイセル膜)を用いたNMR解析を実施した。前年度はTF1に着目したので、今年度は残る3種類のTF類(TF2A, TF2B, TF3)について検討した。バイセル共存下と非共存下におけるTF類の1H NMRを比較した結果、いずれのTF類においてもベンゾトロポロン環に由来するNMR信号の顕著な低磁場シフトあるいは広幅化が観測された。したがって、ベンゾトロポロン環がこの分子間相互作用に重要な役割を果たしていることが考えられた。またTF類の作用により、リン脂質分子の極性基近傍の化学シフトが比較的大きく変化したことから、いずれのTF類においてもリン脂質膜の表面付近に作用していることが示唆され、これらは縦緩和時間の計測結果によっても支持された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.TF類以外の難吸収性ポリフェノールもリポソーム溶液に作用させると不溶性沈殿を形成することを明らかにした。今回は、不溶性沈殿形成の試験法の少量化に成功し、この方法を用いて、様々な難吸収性ポリフェノールの濃度依存性を詳細に比較することができた。 2.蛍光色素の漏出を指標としたTF類とリン脂質の相互作用の数値的評価を試みた。しかし、リポソーム溶液にテアフラビンを添加した試料液は曇るように透明度が下がり、蛍光測定が妨害されることが明らかになった。 3.NMRを用いた解析に関して、前年度はテアフラビン一種類のみの検討であったが、今年度は残る全ての類縁体について着手し、各テアフラビンとリン脂質膜との相互作用解明に必要な多くのNMRパラメータを順調に取得した。いずれのテアフラビンにおいても、リン脂質膜表面付近で相互作用することが明らかとなったが、配向性をはじめとした相互作用様式はテアフラビン類の化学構造の違いによって異なっていることが考えられた。今年度に得られたこれら成果は学会にて既に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.不溶性沈殿形成の試験法の少量化に成功したので、キット化についても検討する。リン脂質膜二重層にTF類を作用させた時に生じる脂質膜の構造変化を可視化するため、原子間力顕微鏡による解析をさらに進める。 2.蛍光色素の漏出を指標としたTF類とリン脂質の相互作用の数値的評価については、他の評価系を検討する。 3.NMR測定を継続し、不足している空間的距離情報を補完するとともに、テアフラビン類とリン脂質膜との相互作用モデルを分子レベルで描写する。そして、テアフラビン類の化学構造の違いがリン脂質膜中における挙動の違いとどのように関連しているのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
本研究は3大学の大学教員で遂行されているためそれぞれの事情が異なるが、当初、1年目で研究を立ち上げ、2年目で実質的な進展をとげ、3年目はまとめにあてる計画を立てた。現時点では、進捗状況で述べたように概ね順調に進んでいるものの、論文発表などのまとまった成果を挙げるためには、引き続き基礎的な条件検討を必要とする項目も存在する。そこで3年目にはこのような項目の研究を重点的に進め、プロジェクトをバランスよく完成させることを目標にしたい。具体的には、不溶性沈殿形成の試験法の少量化に基づいたキット化を検討し、蛍光色素の漏出を指標としたTF類とリン脂質の相互作用については別の方法の検討を進める予定である。新型コロナウィルスの影響もあり、研究開始の目途が立たないが、可能になった時点で必要度が高いものを集中的に行うことができるように、設備や消耗品の準備を進めていくつもりである。
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