2018 Fiscal Year Research-status Report
哺乳動物精子形成後期に特徴的な翻訳遅延と脱アデニル化の機構
Project/Area Number |
18K05546
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柏原 真一 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (00254318)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 翻訳制御 / ポリ(A)鎖 / 精子形成 / RNA結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
精子特有の構造である凝縮した核や鞭毛などを構成するタンパク質のmRNAは、半数体前期の球状精細胞で転写され、後期の伸長精細胞で翻訳される(翻訳遅延)。このような半数体特異的mRNAは、mRNA-タンパク質複合体 (mRNP) を形成することにより、約一週間の間、翻訳不活性な状態で保存される。本現象には、mRNAの3’非翻訳領域 (3’-UTR) が関与することが報告されている。しかし、このmRNA保存にかかわるRNA結合タンパク質は、いまだ明らかにされていない。一方、申請者はこれらmRNAが伸長精細胞で翻訳される際には、段階的な脱アデニル化中間体が形成されることを見出している。本研究では、翻訳遅延にかかわる因子の同定とその機構、および脱アデニル化中間体形成のメカニズムを明らかにすることを目的とした。平成30年度においては、以下の点を明らかにした。 ①Prm1をはじめとする複数種の半数体特異的mRNAの3’-UTRをビオチン標識し、精巣のmRNP画分に対してプルダウンを行った。その結果、これらmRNAの3’-UTRに共通して結合する因子として、hnRNP U, hnRNP R, およびIgf2bp1を同定することができた。②精子形成の減数分裂前期以降においては、半数体特異的mRNAの翻訳遅延に加え、すべてのmRNAの翻訳が部分的に抑制されている。この抑制にY-box RNA結合タンパク質 (YBX) が関与することを、培養細胞を用いた再現実験により明らかにした。また、YBXタンパク質は翻訳抑制のみならず、mRNAの安定化にもかかわることが判明した。したがって、半数体特異的mRNAの保存にはYBXタンパク質も関与している可能性がある。③半数体特異的mRNAの脱アデニル化中間体の形成には、ポリ(A)鎖結合タンパク質が関与することを、培養細胞での過剰発現により明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
翻訳遅延にかかわる候補因子を同定することができた。また、脱アデニル化中間体形成のメカニズムについても知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①同定された因子の翻訳への関与を、半数体特異的mRNAの3’非翻訳領域を有するルシフェラーゼレポーターアッセイにより評価する。 ②これら因子の精子形成過程での存在時期を調べ、翻訳抑制が解除される伸長精細胞で消失するなどの変化を明確にする。 ③脱アデニル化と翻訳との関連について、検討する。
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Causes of Carryover |
(理由)同定された因子に対する抗体を購入しなかったため。
(使用計画)平成31年度において、同定因子の抗体購入あるいは作製に使用する予定である。
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