2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K05549
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
石井 智浩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (60549947)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 隆夫 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50218004)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | オプトジェネティクス / 光遺伝学 / カルシウムシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は光依存性カルシウムチャネルスイッチBACCSの改良と近赤外光に応答する光スイッチの検討を行った。 BACCSは私が以前に開発した光遺伝学ツールで、BACCS発現細胞では青色光を照射すると細胞内にカルシウムイオンが流入する。BACCSの構造はフォトトロピンの光感受性ドメインLOV2とショウジョウバエ由来Stimを融合したもので、細胞膜に発現させたショウジョウバエ由来Oraiを光依存的に活性化する。改良にあたって、(1)LOV2の光サイクルに関する変異体の作製、(2)他のグループが作製したカルシウムシグナルの光スイッチを参考にBACCSを改変した変異体の作製、(3)BACCSとdOraiの発現比を様々に変化させた変異体の作製、の3つの試みを行った。最終的に以前のものに比べ応答は変わらないものの、バックグラウンドが低いスイッチを作製することができた。 また、近赤外光を照射するシステムの構築と近赤外光に応答する光スイッチの作製を行った。照射システムは顕微鏡下で波長770nmの光を照射する方法と、CO2インキュベータ内で波長740nmの光を照射する方法の2つを確立した。近赤外光スイッチとしてはBphP1/PpsR2(QPAS1)を用いた。BphP1は近赤外光(波長740-780 nm)に応答して構造を変化させ、PpsR2と結合できるようになる。QPAS1はPpsR2の一部でBphP1と結合できる最小単位である。予備実験として細胞膜の局在させたQPAS1に光依存的にBphP1を結合させる実験を行い、近赤外光照射システムが機能することと光スイッチタンパク質が応答することを確認した。現在、細胞内シグナルなどに関わる酵素群について、BphP1/PpsR2を用いたコンストラクトを作成して、培養細胞において活性を測定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カルシウムシグナル光スイッチBACCSに関しては当初の予定通りの変異体を作製し、またそれを元に変異を組み合わせたものも作製した。結果的に改良に成功したので順調に進展していると言える。 BphP1/PpsR2(QPAS1)を用いた近赤外光スイッチに関しては、初めてのシステムということもあり様々な試行錯誤を行った。顕微鏡に設置する波長770nm LEDに関しては既存のシステムを取り付けることで対応することができたが、CO2インキュベータ内で用いるLEDに関しては自分で作製しなければならなかった。困難はあったが最終的に様々な周波数で波長740nmの光を培養細胞に照射するシステムを構築することができた。この近赤外光のシステムを用いて様々な実験を計画しているが、最初はBphP1やPpsR2の特性を理解し、近赤外光により応答する最適な条件を探すことが重要であると考えた。タンパク質の構造や光の照射条件に関する予備実験には時間をかけ、光依存的にBphP1とPpsR2が結合できる条件を見つけることができた。予備実験は順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
BACCSに関しては、近赤外光スイッチと組み合わせて使用することを考えている。つまり青色光で細胞内カルシウムシグナル、近赤外光で別の細胞内シグナルを操作し、これまで困難であった2種類の細胞内シグナル操作による細胞機能の制御を行う。 近赤外光スイッチに関しては、PI3キナーゼなど細胞内シグナルに関わる分子を用いてその有効性を調べる。PI3キナーゼを青色光で機能制御するシステムはすでに確立しているので、同様の制御が近赤外光で可能かどうかを検定する。その後、様々な細胞内シグナルや、その他の酵素機能の制御を試みる。BACCSにより青色光で誘導されるカルシウムシグナルと近赤外光により誘導される細胞内シグナルのクロストークを調べる。
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Causes of Carryover |
初年度の研究では様々な融合遺伝子を作製し、培養細胞でそのタンパク質の機能を検定することに重きをおいたため、通常の分子生物学の実験、細胞生物学の実験を数多く行った。いくつかの阻害剤や抗体、化合物の購入は次年度へと先送りとなったため、次年度使用額が生じた。 次年度は現在作製中の融合遺伝子を詳細に解析するため、1年目に購入しなかった試薬も購入して研究を行うことになる。
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Research Products
(1 results)