2018 Fiscal Year Research-status Report
DNA/RNAヘテロ2本鎖核酸を切断するヌクレアーゼの同定および作用機序解明
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18K05550
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
浅田 健 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 外来研究員 (70773414)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 核酸医療 / DNA/RNAヘテロ核酸 (HDO) |
Outline of Annual Research Achievements |
核酸医薬品は大きな可能性を秘めた新規医薬品として、抗体医薬品や再生医療と同様に精力的に研究されている。近年、新規核酸医薬品であるHDO(DNA/RNAヘテロ2本鎖核酸)が報告された。HDOは既存の核酸医薬として劇的な活性向上を示したが、HDOによる遺伝子発現制御機構は、ほとんど何もわかっていない。 本研究代表者はまずトコフェロール結合HDO(Toc-HDO)と新規結合タンパク質を同定するためのアッセイ系を確立した。この新規に立ち上げたアッセイ系を利用して、Toc-HDOに結合すると考えられる、ANXA5およびCA8の2つの候補タンパク質を見つけだした。 続いて同定したANXA5およびCA8タンパク質を手がかりに、さらなる網羅的探索を行なった。CA8に対する免疫沈降、続く銀染色によるタンパク質の可視化から、CA8に結合するタンパク質と見つけだした。この結合タンパク質は、その後のMS解析の結果から、TPM3(Tropomyosin 3)であることが明らかとなった。CA8がTPM3と結合することは、世界で初めての報告である。 さらにToc-HDOを切断するタンパク質を見つけ出すために、バイオインフォマティクス解析を行った。数多くの候補タンパク質の中から、RNase H活性を有すると考えられるAPEX1およびFEN1タンパク質を見出した。従って、これらToc-HDOに結合すると考えられるANXA5,CA8,APEX1,FEN1およびTPM3に関して、Toc-HDOとの結合などの詳細な検討する事を目的に、大腸菌内でリコンビナントタンパク質を発現させ、HisタグもしくはGSTを用いて精製した。現在は、これら精製タンパク質を用いて、様々な解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備実験で同定したANXA5とCA8に結合するタンパク質を網羅的に解析するために、それぞれのタンパク質に対する抗体で免疫沈降を試みた。残念ながらANXA5に対する市販の2種類の抗体いずれもが、免疫沈降をさせることができなかった。一方で、CA8に対する免疫沈降は界面活性剤あり・なしいずれの条件でもうまく沈降させることに成功した。そこでCA8に対して免疫沈降を行い、銀染色による結合タンパク質の可視化、続く結合タンパク質の切り出しを行った。その後のMS解析の結果から、結合タンパク質はTPM3(Toropomyosin 3)であることが明らかとなった。CA8とTPM3との結合は、世界で初めての報告である。 続いて、異なったアプローチ法、特にバイオインフォマティクスを用いた解析から、TOc-HDOを切断すると考えられるAPEX1およびFEN1を見つけだした。現在は、大腸菌によるリコンビナントタンパク質を発現および精製しており、これらリコンビナントタンパク質を用いて、Toc-HDOとの結合や切断などの詳細な検討を行っている。以上の理由から、順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Toc-HDOとの結合が考えられる候補タンパク質に対して、リコンビナントタンパク質を作成・精製する。精製後のリコンビナントタンパク質を用いて詳細な検討を行う。 結合解析でポジティブな結果が得られたタンパク質に対して、培養細胞を用いて、細胞内でToc-HDOによる遺伝子発現制御にどのように関わっているかを検討する。用いる細胞はマウス由来のHepa1-6細胞を考えており、Hepa1-6細胞に対してsiRNA処理を行い、候補タンパク質のノックダウンを行う。WB法により目的タンパク質のノックダウンを確認し、ノックダウンが確認された細胞を用いて、Toc-HDOをgymnosis法により処理する。処理48時間後にRNAを回収し、その後はRT-qPCRを用いて目的の遺伝子発現量を定量し、比較検討する。また同定タンパク質間のタンパク質-タンパク質結合を解析するために、IP-WBや蛍光顕微鏡によるタンパク質の共局在を確認する予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定と比べて、wetの研究が順調に進展した。また当初は免疫沈降法を用いて網羅的にToc-HDOに結合するタンパク質を同定する予定だったが、バイオインフォマティクスを持ちいた解析が順調に進展したため、wetの実験に用いる予定であった試薬代や消耗品代を節約することができた。2019年度は2018年度に持ち越した研究費を用いて、今後はToc-HDOに結合するタンパク質に対する結合や切断などの詳細な検討を行う予定である。
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