2018 Fiscal Year Research-status Report
Rapid large scale VLP vaccine production by genome edited insect cells
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18K05551
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
馬橋 英章 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (40785937)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 昆虫細胞 / 糖タンパク質 / ウイルス様粒子 / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
蚊が媒介するウイルスによる感染症は、地球温暖化により先進国でもパンデミックが生じる可能性が高まる一方で、その多くにワクチンが存在しない。ウイルス構造タンパク質から構成されるウイルス様粒子Virus-like particle (VLP)は、これらのウイルスに対するワクチンとして期待されている。バキュロウイルス昆虫細胞発現系はVLP生産に広く用いられているが、バキュロウイルス粒子の混入が避けられず、精製方法が煩雑になることが問題である。 本研究ではバキュロウイルスを用いず、高効率な一過性トランスフェクション法を昆虫細胞の大量振盪培養へ応用し、バキュロウイルス関連因子の混入のない迅速なVLP生産系を構築する。さらに、混入しやすい内在性因子を同定し、それらをCRISPR-Cas9によるゲノム編集にてノックアウトすることで新規な昆虫細胞株を樹立し、精製の容易なVLPの大量生産法の開発を目標としている。 本年度は、その第一歩として振盪培養中の昆虫細胞に対するDNA導入方法の最適条件の検討、またVLPのモデルタンパク質として日本脳炎ウイルスのprMとEタンパク質の発現系の構築を行った。DNA導入方法には、Polyethyleneimine (PEI)を用いた。この手法では無血清培地条件で振盪培養中の昆虫細胞に対して効率よくDNAを導入することが可能である。一方で、細胞に対する毒性が認められることから、適切なPEI量、DNA量、PEI/DNA比で用いることが重要である。蛍光タンパク質EGFPの発現量を指標として細胞内に導入されたDNA量を推定し、最適条件を検討した。また、日本脳炎ウイルスのprM-Eを効率よく発現するための発現コンストラクトを作製し、これにより昆虫培養細胞にてprM、Eタンパク質がそれぞれ発現していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず初年度として、安定的に細胞培養が可能な環境の構築を目指し、機器、試薬等を準備した。その結果、静置培養、振盪培養ともに問題なく行う環境が整った。 研究の進捗状況としては以下のとおりである。まず、日本脳炎ウイルスのprM-Eタンパク質の発現用コンストラクトを予定通り作製した。このコンストラクトは、pr-Mの切断部位に変異を入れる、昆虫細胞に対するコドン最適化を行うなどの理由から、3本の合成遺伝子を連結することによって作製した。昆虫細胞へのDNA導入手法として、PEIを用いたトランスフェクション条件の最適化を行った。振盪培養中の細胞に安定的にDNAを導入することが可能となったが、残念ながら当初予定していたトランスフェクション効率は達成できていない。この点は更なる改善が必要である。作製したprM-E発現コンストラクトによりタンパク質発現が可能であるかを一過性発現後の培養液を用いたWestern blotにて検証した。その結果、抗prMタンパク質、抗Eタンパク質の抗体それぞれによって想定されたサイズにタンパク質の存在を確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、PEIを用いたトランスフェクションであるが、培養液の種類による効率の違い、またDNAの調整方法による差異など、未検討項目について追加検討を行う。 prM-Eタンパク質については、それぞれのタンパク質が発現していることは確認できたので、これらが予定通りVLPを形成していることを確認する。まずは分子サイズによる分画によってVLP形成を確認する予定である。 その後、サイズ分画によって精製されたVLPとコントロールを比較し、VLPに付随して混入してくるタンパク質群を同定する予定である。
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