2019 Fiscal Year Research-status Report
液胞アミノ酸排出機構解明によるオートファジーアミノ酸リサイクルの生理的意義の検討
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18K05560
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
関藤 孝之 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (20419857)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 液胞 / トランスポーター / オートファジー / アミノ酸 / 出芽酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度同定した酵母VBT1遺伝子の破壊株では液胞内塩基性アミノ酸含量が大幅に減少する。この株の解析をさらに進め、液胞内塩基性アミノ酸の生理機能について新たな知見を得た。また、高等生物まで広く保存されているPQループタンパク質の酵母ホモログYpq2が液胞膜小胞のアルギニン/ヒスチジン交換輸送活性の分子実体であることを示すとともに、プロトン濃度勾配に依存してアルギニンを輸送する活性も有することを論文発表した。 中性・塩基性アミノ酸を液胞外へと排出するトランスポーターAvt4の発現調節については、前年度までにGATA転写因子の関与が示唆され、プロモーター領域内のGATA転写因子結合配列への変異導入実験においてもこれを支持する結果が得られていた。本年度はクロマチン免疫沈降実験を行い、GATA転写因子と共沈降したクロマチン試料にAVT4のプロモーター領域を検出した。さらに、AVT4の転写が誘導される窒素飢餓条件でAVT4プロモーター領域の共沈降が顕著に増加することから、AVT4はGATA転写因子の直接的なターゲットであることが明らかとなった。他の液胞アミノ酸トランスポーターについても同様の解析を行い、クロマチン免疫沈降実験によってGATA転写因子の新たなターゲットを見出している。GATA転写因子が直接作用することは、液胞アミノ酸輸送が細胞内のアミノ酸ホメオスタシスにはたらくことを強く示唆する。AVT4については欠損によって生育阻害を示す培養条件も見出し、液胞内アミノ酸がTORC1活性に影響することを示唆する結果も得られた。以上の液胞アミノ酸トランスポーターの発現調節およびTORC1活性への関与についての成果はシンポジウム・国際学会等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液胞からのアミノ酸リサイクルの生理的意義を理解するには、液胞膜を介したアミノ酸輸送を欠損させ、生育等への効果を検討する必要がある。現在、液胞膜には複数のアミノ酸トランスポーターが重複して機能することが明らかになりつつある。したがって、これまで同定されたトランスポーターの多重欠損の効果は部分的であった可能性があることから、液胞膜局在性アミノ酸トランスポーターの網羅的同定に向け、GFP融合トランスポーター全228種の過剰発現プラスミドライプラリーの構築を進め、液胞膜に局在したものについては、順次液胞内アミノ酸含量への影響を評価している。 トランスポーターの活性調節については、Avt4 N末端親水性領域と相互作用するタンパク質候補をいくつか単離し、細胞内での相互作用を共免疫沈降によって検討している。またAvt4のリン酸化に依存した相互作用の可能性も考慮し、推定リン酸化部位をアラニンもしくはアスパラギン酸に置換した変異型Avt4の発現系を構築し、これらとの相互作用も検討している。一方、GST pull-downによる相互作用因子の探索にも着手したが、Avt4 N末端のGST融合タンパク質を大腸菌で発現させると不溶化し、Avt4全長のGST融合タンパク質を酵母菌で発現させた場合においても、グルタチオンビーズに効率よく結合しなかったため、現在実験条件を調整中である。 これまで、液胞アミノ酸リサイクルが胞子形成効率および飢餓条件での生存率維持に重要であることを見出しているが、さらにオートファジー活性への関与を示唆する結果を得ている。オートファジーは胞子形成と飢餓条件での生存率維持のいずれにも必須であることから、液胞アミノ酸リサイクルの生理的意義を理解する上で根幹をなす重要な知見と考えている。現在その作用機序について多様な角度から検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
液胞アミノ酸トランスポーター変異株の解析において、単離液胞膜小胞のアミノ酸輸送活性測定の結果が液胞内アミノ酸含量の変化と一致しないケースがあったが、単離液胞膜小胞実験の条件設定により、液胞内アミノ酸含量の変化と一致する実験条件を見出した。基質特異性や輸送の向きにおける生化学的な解析をさらに進め、液胞膜局在性トランスポーターの網羅的同定および液胞内アミノ酸含量測定と組み合わせることにより、新規液胞アミノ酸トランスポーターの同定につなげたい。新規トランスポーターの同定は既知トランスポーターとの多重欠損によって生育等表現型の明瞭化につながる可能性があり、生理機能解明の起点となる。 液胞アミノ酸輸送の活性調節についてはTwo-hybridスクリーニングによってこれまで同定されたAvt4との相互作用タンパク質候補について、in vivoでの相互作用の有無、リン酸化による相互作用の変化、遺伝子破壊による液胞内アミノ酸含量の変化など、細胞内でのAvt4活性への影響評価を進める。また、共免疫沈降およびGST-pull down等により、さらなる相互作用タンパク質の探索を進める。今後、相互作用タンパク質の解析が液胞内アミノ酸の新規生理機能解明につながる可能性が高いと考えている。。 液胞アミノ酸トランスポーター多重欠損による窒素飢餓条件での生存率低下を見出したが、個々のトランスポーターを発現しても生存率が回復しなかった。この結果について、飢餓条件に移行後、トランスポーターが適正なタイミングと量で発現することが必要との仮説を立て、検討する予定である。オートファジー活性への影響評価においても同様にトランスポーター発現による相補を確認した上で、マイクロアレイ解析により液胞アミノ酸トランスポーター欠損株の遺伝子の発現変化を網羅的に解析し、生存率維持およびオートファジー活性維持に働く因子を同定する。
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