2018 Fiscal Year Research-status Report
トランスクリプトームビッグデータ解析を活用した高油脂生産Coccomyxaの創生
Project/Area Number |
18K05561
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
笠井 由紀 中央大学, 研究開発機構, 専任研究員 (20416572)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | バイオディーゼル / Coccomyxa属緑藻 / トランスクリプトーム / セルフクローニング / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
CoccomyxaのDYRK変異株と野生株を栄養十分条件と窒素欠乏条件下で培養し、継時的にRNAを抽出しトランスクリプトーム解析を行った。その結果、DYRK変異株で脂肪酸合成系遺伝子とトリグリセリド合成系遺伝子の転写活性が上昇していることが明らかとなった。これらの遺伝子の転写活性についてリアルタイムRT-PCRで詳細に解析したところ、培養開始後1週間以内に野生株の数倍にに上昇し、その後は野生株と同じレベルに下がることが明らかとなった。 DYRK遺伝子の変異が油脂合成速度の上昇の原因であることを確定するために、野生株のDYRK遺伝子をCRISPR/Cas9で破壊した株を作製し、油脂生産性を解析してその油脂生産性を解析した。その結果、ゲノム編集株はDYRK変異株と同様な結果を示し、DYRK遺伝子変異が油脂生産上昇の原因であることが明らかとなった。 これまでにRuBisCOやelongation factor遺伝子のプロモーター/ターミネーターを過剰発現に利用してきたが、これらの遺伝子は窒素欠乏により転写活性が低下することが問題であった。そこで、窒素欠乏でも転写活性が低下しないammonium transporter遺伝子(AMT1)のプロモーター/ターミネーターを利用して、遺伝子過剰発現を行った。しかしながら、導入遺伝子は期待していた程発現しなかった。そこで、GUS遺伝子を利用してAMT1プロモーター活性を定量的に解析したところ、AMT1プロモーターの活性は高いがGUS遺伝子mRNAの3'側から分解され易く不安定であることが示唆された。AMT1遺伝子mRNAは不安定ではないことから、ターミネーター側の配列によって発現制御を受けている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
30年度の計画通り、DYRK変異株において転写活性が上昇する油脂生産関連遺伝子の同定を行い、野生株のDYRK遺伝子をCRISPR/Cas9で破壊することに成功した。また、栄養ストレス下で高い転写活性を示すAMT1遺伝子のプロモーター領域を利用して過剰発現実験を行った。 しかしながら、AMT1プロモーター/ターミネーターを利用した過剰発現では期待通りの結果が得られていないので2のおおむね順調に進展しているを選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
AMT1プロモーター/ターミネーターの組み合わせで作成した他の遺伝子発現コンストラクトでは、転写産物が不安定になることが示唆されたので、転写産物が安定化する組み合わせを探索するとともに、引き続き栄養ストレス下で高い転写活性を示す遺伝子を探索しそのプロモーター/ターミネーター領域のクローニングを行う事とする。 30年度に行ったトランスクリプトーム解析利用したDYRK突然変異株はDYRK遺伝子以外にも複数の遺伝子に変異を持つため、全ての転写活性の変化がDYRK由来であるとは限らない。そこでCRISPR/Cas9で作成したDYRK遺伝子破壊株を利用してトランスクリプトーム解析を行うことにする。 セルフクローニング株の生物学的封じ込めを可能にするために、CRISPR/Cas9でモリブデンコファクター生合成遺伝子(CNX1G)を破壊し、硝酸塩を窒素源として利用できない変異株を作製する。
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Causes of Carryover |
トランスクリプトーム解析や、CRISPR/Cas9を利用したDYRK遺伝子破壊株の作製が当初予定していたより順調に進んだため、試薬代や塩基配列外注費がかからなかったため。また、同定した遺伝子のcDNAクローニングはDYRK遺伝子破壊株のトランスクリプトームの結果を見て行うことにしたので、その分の試薬代、塩基配列解析代も次年度に繰り越すためにしたから。
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