2019 Fiscal Year Research-status Report
タペート崩壊での転写・活性酸素シグナルによる時空間的オートファジー制御機構の解明
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18K05562
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Research Institution | Suwa University of Science |
Principal Investigator |
来須 孝光 公立諏訪東京理科大学, 工学部, 准教授 (50422499)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | オートファジー / 活性酸素種(ROS) / タペート細胞 / プログラム細胞死 / 花粉発達 / イネ / 転写ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
葯の最内層に存在するタペート細胞は、自身の脂質やアミノ酸を含めた栄養を、プログラム細胞死(PCD)による自己分解により、花粉に供給する重要な機能を担っており、その制御機構の解明は、穀物における稔実制御に直結する。本研究は、花粉への栄養供給細胞である、タペート細胞のPCD過程におけるオートファジー誘導の重要性に着目し、遺伝子発現・活性酸素種(ROS)蓄積を介した時空間的オートファジー制御機構の解明を進め、PCD進行過程における、ROSシグナルとオートファジー機構の生理的意義・重要性を明らかにすることを目指すものである。 本年度は、昨年度に行った各変異体葯の花粉発達ステージ毎の圃場における葯のRNAサンプルを用いて、次世代シークエンサーによるRNAseq解析を実施した。解析の結果、Osatg7-1については、PCD制御に関連する転写因子群の発現低下や遅延、代謝ネットワークの低下、酸化ストレスとの関連性が判明し、タペート細胞のPCD過程における転写ネットワークとオートファジーの関連性が明らかになった。成果の一部は原著論文として報告した。 併せて、本年度は当初の計画どおり、ヘルシンキ大学とのROS生成酵素のリン酸化制御に関する共同研究も実施した。ゲル内リン酸化/Mass解析によるOsCRKsによるROS生成酵素のリン酸化検証を行った結果、OsCRKsがリン酸化酵素として機能するとともに、ROS生成酵素の活性部位におけるリン酸化が明らかになった。一方で、HEK293細胞を用いたCRKsによるROS生成酵素の活性制御については、ROS生成酵素タンパク質の発現が極めて弱く、活性測定が困難であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シークエンサーを用いたRNAseq解析による転写ネットワーク/遺伝子発現プロファイリングについては順調に進んでいる。各種変異体におけるデータ取得は全て完了しており、適宜解析を進めている。一方、今年度から開始したROS生成酵素のリン酸化による活性調節制御の解明については若干遅れている。原因はN末付近のROS生成酵素の配列に問題があることが判明しており、コドン最適化作業を進めており、次年度は計画通り研究が進むと想定している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(最終年度)は、動物培養細胞を用いた葯に発現するリン酸化酵素によるROS生成酵素の活性制御機構の解析を進めるとともに、変異体群のPCD過程におけるROS蓄積、オートファジー活性についても詳細に検証する。CRKに関しては、表現型が極めて弱く、ゲノム上に重複遺伝子も存在していることから、ゲノム編集による二重変異体の作出も視野に入れる。一方、最終年度に予定しているプロモーター解析によるEAT1の転写調節機構や、各因子の葯内の発達ステージにおける組織発現についても年度後半に実施予定である。
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Causes of Carryover |
2019年8月-9月に実施したフィンランドヘルシンキ大学Wrzaczek博士との共同研究に伴う旅費の支出について、大学予算からの支出が可能になったため、共同研究の受託解析費用のみの支出となった。そのため、次年度への繰越予算が生じた。 本繰越予算(128,348円)と2020年度予算を併せ、次年度は実験試薬の購入、旅費、謝金、英文校正費等への支出を計画している。
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Research Products
(4 results)