2018 Fiscal Year Research-status Report
花粉稔性回復遺伝子の不完全優性アレルを利用した細胞質雄性不稔性発現機構の研究
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18K05564
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
久保 友彦 北海道大学, 農学研究院, 教授 (40261333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本間 雄二朗 北見工業大学, 工学部, 助教 (30800495)
北崎 一義 北海道大学, 農学研究院, 助教 (60532463)
田口 和憲 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, グループ長 (80414754) [Withdrawn]
松平 洋明 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 主任研究員 (90549247)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞質雄性不稔性 / 稔性回復遺伝子 / 葯 / 生殖制御 / 花粉発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞質雄性不稔性(CMS)は作物の一代雑種採種に用いられる形質であるが、どのような機構で発現するのかは明らかではない。CMSは花粉稔性回復遺伝子(Rf)の作用で抑制されるので、これを利用した研究を進めることにした。注目したのは、Rfの対立遺伝子(アレル)に不完全優性のものが見つかることである。雄性不稔でもなく、正常でもない状態はCMS発現機構を調べる上で良い材料となろう。本年度は異なるRf対立遺伝子を保持する系統を利用して細胞質雄性不稔性(CMS)発現機構に関する研究を進めた。成果の概要は以下の通りである。 1. Rf1はテンサイ花粉稔性回復遺伝子である。テンサイ系統NK-305の保持するRf1アレルを持つと、明らかにCMSより花粉形成が進むが、その程度は正常系統より劣る。葯内部構造を調べたところ、花粉発達にともなうタペート細胞層の崩壊が不十分であった。 2.フダンソウ「仏国大葉」の保持するRf1アレルは、非常に弱い回復力を示す。「仏国大葉」Rf1保持個体の葯内部では、NK-305 Rf1保持個体よりもさらにタペート細胞層が残存していた。しかし、CMS系統とは違いが認められる。 3.葯タペート細胞発達に関わる遺伝子を、イネやシロイヌナズナとの相同性に基づきテンサイから同定した。これらの遺伝子発現を、1や2の材料で調査したところ、「仏国大葉」Rf1保持個体で発現低下が認められた。 4.葯RNA-seq解析により、転写産物を網羅的に同定した。現在、解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
稔性回復の程度はタペート細胞層の崩壊に関わり、それが遺伝子発現で記述できる可能性が見えてきた。既報の正常 vs. CMSや、正常 vs. CMS vs. 完全回復という方法論とは異なるCMS発現機構解明へのアプローチを確立できるのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、葯RNA-seq解析データを精査しながら、葯発達との整合性を形態学的なアプローチで調査していく。
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Causes of Carryover |
実験材料の都合で、一部の解析を次年度にまわした。また、論文執筆後の英文校正が今年度中に発注できなかった。これらの遂行は次年度に行うが、当初計画からの上積みとする。
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