2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K05565
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小出 陽平 北海道大学, 農学研究院, 助教 (70712008)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イネ / 雑種 / 倍数性 / 不稔 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネの異種間交雑により得られる雑種は花粉および種子が不稔となる。この現象は雑種不稔性と呼ばれ、イネにおいては生殖隔離障壁を形成する機構の一つとなっている。生殖隔離障壁は植物の品種改良を行う際の大きな妨げとなるため、この機構を分子遺伝学的に解析することは育種上のメリットが大きい。 本研究では、4倍体のイネにおいて雑種不稔性がどのように機能するかを明らかにすることを目的としている。昨年度までに、4倍体のイネ雑種を作出し、この雑種を純系個体と戻し交配することにより、雑種配偶子に生じる分離の歪みの解析を行った。しかしながら、多くの戻し交配種子において、受精後の退化現象が生じ、正常な種子をほとんど得ることができなかった。交雑がうまくいかなかった原因の一つとして、4倍体雑種個体では、不親和を引き起こす遺伝子組合わせが多く存在することが考えられた。 そこで、本年度は一つの雑種不稔遺伝子に着目し、4倍体における雑種不稔遺伝子の効果を検証することとした。このことを行うために、雑種不稔遺伝子の準同質遺伝子系統を用い、コルヒチン処理により4倍体を作出した。現在、4倍体イネ間の交配を行うための材料育成を行っている。 並行して、イネの主要な種間雑種不稔遺伝子座であるS1座の原因を特定するために、遺伝子組換え体を作出し、個体の花粉稔性及び種子稔性の調査を行った。これまでに得られた遺伝子発現情報から不稔性への関与が考えられる候補遺伝子(Gene 1)に加え、他の候補遺伝子(Gene 2)が存在する場合に雑種不稔性が生じることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
4倍体雑種作出の実験については、昨年度、交雑がうまくいかないという問題が生じたが、今年度、準同質遺伝子系統を用いた実験系を作ることができ、この実験系により、当初目的が達成できると考えている。雑種不稔遺伝子座S1の原因遺伝子単離については、形質転換により、関与遺伝子を明らかにすることができた。しかしながら、同様の研究が他の研究グループにより行われ、論文が公表された。そのため、当初の計画を大幅に修正する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
4倍体雑種作出の実験については、計画通りに行う。雑種不稔遺伝子座S1の原因遺伝子単離については、同様の研究が他の研究グループにより行われ、論文が公表されたため、当初の計画を大幅に修正する必要がある。そのため、当初実験系のモデルとしていたS1遺伝子座ではなく、他の雑種不稔遺伝子に着目し、遺伝子を特定するための実験を進める。
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Causes of Carryover |
当初、雑種不稔遺伝子座S1の原因遺伝子単離について、遺伝子の機能解析等を想定していたが、同様の研究が他の研究グループにより行われ、論文が公表されたため、研究計画変更の必要が生じた。現在、他の雑種不稔遺伝子の単離に向けた解析を進めており、今年度の繰越額分はこの解析に利用する。
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