2018 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムが転移因子との進化的軍拡競争において獲得した防御機構の解明と育種への応用
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18K05579
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
築山 拓司 近畿大学, 農学部, 准教授 (00423004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷坂 隆俊 吉備国際大学, 農学部, 教授 (80026591)
奥本 裕 京都大学, 農学研究科, 教授 (90152438)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 転移因子 / イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イネ活性型転移因子mPingおよびPingを抑制する遺伝要因を同定・単離することで、進化的軍拡競争における宿主ゲノムの転移因子への対抗手段の一端を明らかにし、得られた知見を新たな育種技術の開発に利用しようとするものである。 イネ品種銀坊主には、600コピー以上のmPingが存在し、これらは元の挿入位置から切り出される活性型と切り出されない不活性型に大別される。これまで、銀坊主に由来する実験系統EM334は、不活性型mPingが転移する突然変異体であると考えられていた。本年度の研究において、EM334と銀坊主のPing挿入多型を比較解析したところ、EM334は銀坊主に銀坊主由来突然変異系統が自然交配して得られたF1雑種であることが明らかになった。このことから、EM334を用いてmPingを抑制する遺伝要因を解析することは不可能であるとの結論に至った。 mPingが不活性化している日本晴が育成されるまでの交配組み合わせを遡るとmPingが活性化している銀坊主に行き当たりる。このことは、銀坊主から日本晴が育成されるまでの過程でmPingが不活性化したことを示唆している。日本晴の育成に用いられた祖先品種農林8号、農林22号、ヤマビコ、および中新110におけるmPing転移活性を調査したところ、これらの品種においてmPingは、転移活性を有しているものの、体細胞で転移している可能性が示唆された。一方、銀坊主の祖先品種である愛国および身代起では、mPingは今なお受精3日目の胚で活発に転移している可能性が示唆された。これらの結果から、初めに、銀坊主と朝日の交配によって農林8号が育成される過程で、受精3日目の胚におけるmPing転移活性が失われた。そして、ヤマビコと中新110の交配によって日本晴が育成される過程で、体細胞におけるmPing転移活性が失われたと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究において、不活性型mPingが転移する突然変異体EM334が銀坊主と銀坊主由来細粒突然変異系統の自然交雑によって得られたF1雑種であったことから、当初計画していたmPingの転移を抑制するnon-epigeneticな機構の解明には至った。しかし、イネ品種日本晴が育成されるまでの過程におけるmPing転移活性を解析することで、mPingは2つの段階を経て不活性化した可能性を提示できた。 これまでの研究から、熱帯ジャポニカ品種Oiranでは、Pingの発現を全身的に抑制する因子によってmPingの転移が抑制されていると考えられた。今年度は、Oiran(Pingは全身的に発現しない)と日本晴(Pingは葉身でのみ発現)の交雑後代F2のうち、Oiran由来のPingのみをもつ系統をPCRによってスクリーニングできた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、まず、日本晴が育成される過程でPingの時期・組織的発現が消失した原因を調査する。これまでの研究では、Ping内部のSNPが時期・組織特異的発現に寄与している可能性が示唆されている。このことから、日本晴の祖先品種におけるPingの発現時期と部位を調査し、Ping内部のSNPが時期・組織特異的発現におよぼす影響を明らかにする。 次いで、OiranにおけるPingの発現抑制因子を同定する為に、RT-PCRによってOiran-日本晴のF3系統におけるPingの発現を調査する。F3系統の発現解析の結果に基づき、Pingが発現するF2 (日本晴型F2バルク)と発現しないF2 (Oiran型F2バルク)のDNAを等量混合し、次世代シーケンサーに供試する。Oiranと日本晴間のSNPについてSNP-indexを求め、日本晴型F2バルクとOiran型F2バルク間で異なるSNP-indexを示すゲノム領域を同定する。Oiranと日本晴間のSNPについてSNP-indexを求め、日本晴型F2バルクとOiran型F2バルク間で異なるSNP-indexを示すゲノム領域を同定する。同定された領域にはOiranに由来するPing抑制因子が座乗する可能性が高い。
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Research Products
(1 results)