2019 Fiscal Year Research-status Report
環境ストレスによる染色体組み換え制御の解明とその育種的利用
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18K05583
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
石川 吾郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, 上級研究員 (30355234)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 雅也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, ユニット長 (30414634)
小林 史典 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, 主任研究員 (80584086)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コムギ / 製粉性 / 量的形質遺伝子座 / 組換え頻度 / 高温ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
コムギの製粉性に関わる量的形質遺伝子座(QTL)として3Bおよび7A染色体上の要因が見いだされている。これらを対象として、候補領域の絞り込みのための組み換え個体の選抜および高温ストレスによる組換え頻度向上効果を調査した。 供試材料は、「しゅんよう/きたほなみ」の交雑当代(F1)に由来する倍加半数体系統のうち、対象QTLが高製粉性である「きたほなみ」型を有し、他のQTLは「しゅんよう」型である系統をそれぞれ2系統選び、これらの系統に「しゅんよう」を戻し交雑し、QTL近傍をヘテロ接合体で維持しながら自殖を進めた4つの集団(3B-1、3B-2、7A-1および7A-2)である。 QTL近傍マーカーによる組み換え個体の選抜の結果、3B-1では29個体、3B-2で7個体、7A-1で25個体、7A-2で18個体のホモ型組み換え個体が得られた。これらから得られた種子を系統として、これまでに得られた組み換え系統とともに圃場試験(11月播種)に供試した。 また、昨年度圃場試験に供試し、本年度製粉に十分な種子が得られた組み換え型固定系統(3B:20系統、7A:52系統)を用いて、QTL近傍の遺伝子型(3B:67マーカー、7A:48マーカー)および製粉性を調査し、QTL領域の絞り込みを行った。その結果、3Bでは系統数が少なく製粉性と関連する領域は判然としなかったが、7Aでは260(tarc0739)~450Mb(tarc0798)付近に製粉効率および粒度に深く関与する遺伝子の存在が明らかとなった。 次に、組み換え個体の選抜効率を上げるため、高温ストレスによる組み換え頻度の向上効果を調査したところ、3B-1および7A-2集団では高温ストレスにより組み換え頻度が高まっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象QTLの候補領域を絞り込むための組み換え個体の選抜を2年間実施した結果、3Bでは56系統、7Aでは95系統を得ることができた。現在、これら系統の製粉性を調査するため圃場試験に供試しており、次年度にはQTL領域の絞り込みが行える予定である。また本年度、アンプリコンシーケンス法を用いて、予備的にQTL近傍マーカーの網羅的解析を実施し、多数マーカーの多検体解析が極めて効率よく実施出来ることを確認できた。さらに、高温ストレスによる組み換え頻度調査では、春化処理後に30℃条件で収穫まで栽培した場合、23℃に比べて一粒重が40~50%減少するなど、十分なストレスが掛かっていることが確認できた。この試験で得られた種子を集団・処理あたり161~192粒、合計1,438粒用いて組み換え個体の出現頻度を調査したところ、3Bについては1.6~4.2%、7Aについては31.1~43.2%であり、3B-1および7A-2の集団では30℃栽培で有意に頻度が高まっていることが確認できた。このうち、7A-2については2ヶ年とも組み換え頻度の向上が認められている。
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Strategy for Future Research Activity |
対象QTLの候補領域を絞り込むため、現在圃場試験に供試している組み換え型固定系統の遺伝子型および製粉性を調査する。また、3Bの組み換え頻度調査に用いたマーカーは物理距離で約100Mb離れているものの組み換え頻度が極端に少ないことから、国際コンソーシアムで進めているコムギ10品種のゲノム解読プロジェクト「10+Genome」のデータを用いて当該領域の染色体構造について調査したところ、国内品種「農林61号」はこの領域に他の品種が持たない約65Mbの逆位が存在することが明らかとなった。そこで、本研究の供試集団の組み換え抑制にこの逆位が関与しているかどうかを調査する。
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Causes of Carryover |
アンプリコンシーケンス法により多検体の遺伝子型解析コストを削減することができた。次年度は繰り越し分で3B染色体の逆位を検出できるマーカーを開発する予定である。
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