2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of a massively parallel SNP-typing method for rapid and efficient identification of responsible genes in mutants
Project/Area Number |
18K05587
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
市田 裕之 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 開発研究員 (80513382)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イネ / SNPタイピング / 耐塩性 / 変異体 / 重イオンビーム |
Outline of Annual Research Achievements |
DDBJSequenceReadArchiveに登録されたイネ品種「五百万石」「亀治」「コシヒカリ」由来のリードを既報の変異解析パイプライン(Ichida et al.2019)を用いてイネリファレンス配列にマッピングし,各系統に特異的な一塩基多型(SNP)を抽出した。これらの中から,各品種でホモ接合の多型を約100 kb間隔となるよう無作為に選択し,前年度までに開発した反復配列や重複領域に座乗するマーカーを可能な限り排除して特異性の高い長鎖オリゴDNAプローブを設計するアルゴリズムを実装したプログラムを用いてプローブ配列を設計した。設計したプローブ配列(計12,091種類)を混合オリゴヌクレオチドライブラリとして合成し,ビオチン化プローブを調製した。このビオチン化プローブとイネ6品種のゲノムDNAから作成したショットガンライブラリを用いて実際にSNP濃縮を試みたところ,ターゲット領域長を200 bp以上とした場合に高精度のSNPタイピングに充分な量のリードが得られ,全てのターゲット領域において遺伝子型を決定することに成功した。このことから,本法によって理論通りにSNP濃縮が可能であることを実証した。また,重イオンビーム照射に由来する耐塩性変異体に,親品種である日本晴を戻し交雑した自殖後代(F2)集団を塩害水田で栽培し,耐塩性や収量などの表現型を調査した。今後,F2集団の各系統のSNPタイピングを実施し,今年度に取得した表現型の評価結果と組み合わせて評価することで,耐塩性の原因遺伝子を同定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究項目1】で実施中の長鎖オリゴDNAライブラリを用いたSNP濃縮技術を開発においては,当初の研究計画どおりにプローブ設計プログラムの開発と実証実験を完了しており,順調に研究が進展している。また,本技術を応用してイネ耐塩性変異体における原因遺伝子を単離する【研究項目2】では,イネ変異体の全ゲノム解析に基づく変異検出を完了して重イオンビーム照射によって変異体ゲノムに誘発された変異自体をマーカーとして形質マッピングを行う準備を行うとともに,戻し交雑F2集団の塩害水田における表現型調査を完了した。このことから,当初の研究実施計画に沿って順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画に沿って進める予定である。 近年,イネにおいては全ゲノム解析の普及によってM2などの分離集団から目的の表現型を示した個体を複数選んでバルク化し,変異体間で共通する変異を探索するMutMap法が多く用いられているが,本研究で提案するターゲットSNP濃縮法では変異体型を示した個体をバルク化することなく,各個体の遺伝子型をそれぞれタイピングできるという特徴を活かして,遺伝子型に基づくゲノム育種にも応用可能である点に留意して研究を進める。実際の育種現場に本法を導入する場合,ライブラリ調製に要する労力とコストが課題となることが予想されることから,前年度に導入したタンパク精製装置を用いて精製したtransposaseタンパクを利用した簡便かつ低コストの方法を確立する。
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Causes of Carryover |
中国における新型コロナウイルス発生の影響によって,同国内の外注先ラボで実施予定だったシーケンシングを延期せざるを得ない状況となった。このため,本年度中に行う予定であった長鎖オリゴDNAプローブを用いたSNPタイピングの実証実験のうち,イネ耐塩性変異体と親品種の戻し交雑によって得られたF2集団の各個体を対象とした変異タイピングに必要な消耗品および役務の調達を一時中止し,次年度に延期せざるを得ない状況となった。今年度分の未執行額は次年度に延期した研究内容の遂行に必須であるため,次年度使用額の繰り越しが必要である。
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