2018 Fiscal Year Research-status Report
ライムギの二期作栽培による一般耕作地からの飼料生産の試み
Project/Area Number |
18K05588
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
秋本 正博 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (60312443)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
義平 大樹 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (50240346)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ライムギ / 飼料作物 / 食用作物 / 二期作栽培 / 収量 / 栄養価 |
Outline of Annual Research Achievements |
ライムギは長稈型のムギ類作物で、茎葉部は粗飼料として、子実は食用あるいは濃厚飼料として利用できる。また、他のムギ類作物と異なり、成育途中に茎葉部を刈取ると二番草が再生し結実する。この生育特製を利用することで、一番草で得られる茎葉部を粗飼料として、二番草で得られる子実を食用あるいは濃厚飼料として活用する二期作栽培を行える可能性がある。本年度はライムギの二期作栽培を実践化するための基礎情報の獲得を目的に、一番草の適切な刈取時期の検討を行った。 ライムギ品種「ふゆ緑」を帯広畜産大学において栽培し、穂ばらみ期、出穂始期、および穂揃期と異なる生育ステージで一番草を収穫した。一番草の乾物収量は、穂ばらみ期、出穂始期、穂揃期の収穫で、それぞれ258.1g/m2、358.0g/m2、497.0g/m2と刈取りの時期が生育の後期になるほど高かった。一方、生育の早期に刈取った一番草ほど、細胞内容物や高消化性繊維の含有率が高く、栄養価に優れていた。一番草の可消化養分総量は、穂ばらみ期、出穂始期、穂揃期の収穫で、それぞれ70.9%、68.1%、60.5%であった。二番草における子実収量は、一番草を穂ばらみ期、あるいは出穂始期に収穫した場合に、それぞれ233.8g/m2、205.3g/m2となった。これは、一番草の収穫を行わず慣行的にライムギを栽培した場合の子実収量(487.5g/m2)のおよそ半量に相当した。これに対し、一番草を穂揃期に収穫した場合には、二番草がほとんど再生せず、子実収量が30.0g/m2と低い値となった。これらのことから、ライムギの二期作栽培を行うためには、一番草の収穫を穂ばらみ期、あるいは出穂始期に行う必要があることが分かった。また、一番草の収量を重視する場合には収穫を出穂始期に、栄養価を重視する場合には収穫を穂ばらみ期に行う事がそれぞれ適切であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、ライムギの二期作栽培を実践するための基礎情報の獲得を目的に、一番草の適切な刈取時期の検討を行った。ライムギは越年生の作物であるため、収穫を行うためには前年の秋に作付を開始する必要がある。研究代表者らは、課題採択前の2017年に、本研究の計画に合うようライムギの作付けを開始していたため、円滑に2018年度の研究に着手することができた。一方で、試験栽培を行った北海道では、2018年の春から初夏にかけて低温が続いた。この期間は、一番草を収穫したライムギが二番草の再生を行う時期に相当するため、二番草のデータに対し平年とは異なる環境効果が加わっている可能性がある。2018年度の研究により、研究実績の概要に記した重要な知見を得ることができたが、異なる年度における反復試験を行うことで、成果の再検証を行って行くことが必要と考えられた。 当初、2018年度には、ライムギの二期作栽培を行うための適切な肥培管理方法を検討する計画であった。しかし、この試験のために栽培したライムギが、6月下旬に北海道を襲った大型低気圧の影響により激しく倒伏を起こしてしまった。正確な生育調査や収量調査が不可能となってしまったため、本課題につては成果を得ることができなかった。 二期作栽培に適したライムギ品種の育成を目的に、既存のライムギ10品種を任意交配させた合成系統を育成している。2018年度は、研究計画に従い、F3集団として保有していた合成系統を世代更新し、F4集団を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の成果を踏まえ、2019年度には、適切な一番草の刈取時期を検証するための栽培試験を年次間反復試験として行う。また、ライムギの二期作栽培を行うための適切な肥培管理法を検証するための栽培試験を行う。これらの試験を行うにあたり、2018年9月に帯広畜産大学、および酪農学園大学の実験圃場にライムギの播種を行い、栽培を開始している。ライムギは順調に生育を行っており、2019年度の栽培試験を円滑に開始できると考えている。また、2018年度の栽培試験では、不時の風雨により一部の株が激しく倒伏してしまったため、試験データの取得に支障が生じてしまった。2019年度の栽培試験では、試験区周辺に暴風網などを設置するこで倒伏の回避を図るなど、成果を確実に取得するための対策を行っていく予定である。適切な一番草の刈取時期を検証するための試験については、年次間の反復試験の結果を集約することにより、2019年度内に論文、および学会発表として成果を社会に公開していく計画である。 近年行ってきた予備試験により、ライムギの近縁作物であるライコムギについても、ライムギと同様に二期作栽培を行えることが明らかになった。本研究課題は、ライムギを対象作物としたものであるが、2019年度以降はライコムギも供試作物のひとつとして試験に組み込み、ライムギと同様の調査を行っていく計画である。これにより二期作栽培の技術を適用できる作物の多様化を検討していく予定である。
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Research Products
(2 results)