2019 Fiscal Year Research-status Report
ヤムイモ類における沈降性アミロプラストとオーキシンが関わる塊茎形状成立機構の解明
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18K05590
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
川崎 通夫 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (30343213)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヤムイモ / ナガイモ / 形態形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究者はこれまで、ナガイモ塊茎の頂端部に重力方向へ沈降するアミロプラストが多数局在することを見出した。植物の根は、頂端部の沈降性アミロプラストを含む根冠で重力方向を感受することを起点とし、オーキシンの根内分布を制御して形態形成に至ることが知られている。そこで本研究は、 1.「沈降性アミロプラストと塊茎形状成立との関係」および 2.「オーキシンと塊茎形状成立との関係」を明確化し、更に 3.「塊茎形状成立に関わるシグナル伝達の仕組み」も検証することで、ヤムイモ類塊茎の形状成立機構を包括的に理解することを目的とする。平成31年度(令和元年度)の実施研究では、前年度に引き続き沈降性アミロプラストと塊茎形状成立との関係性を更に明確化するため、ナガイモ系園芸試6(細長い形状)、ツクネイモ(球状)、イチョウイモ(扁平状、イチョウ葉状)の各塊茎について横倒しさせるなどの重力刺激処理を行った。その結果より、塊茎の皮層に含まれるアミロプラストの数・量や分布の差異が、塊茎形状や重力応答性の差異の発現に関与している可能性を裏付けるデータが得られた。また、平成31年度(令和元年度)では、オーキシン輸送体の関連遺伝子(PIN遺伝子)、外生・内生オーキシンおよびカルシウム(シグナル伝達物質の候補)と塊茎形態形成との関係性を明らかにするための調査も進めた。その結果、オーキシンやカルシウムと塊茎形成との間に認められる関係性を示すデータが増え、更に研究を進める上で有意義な情報が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度(令和元年度)でも、ナガイモ系園芸試6(細長い形状)、ツクネイモ(球状)、イチョウイモ(扁平状、イチョウ葉状)を用いて、各塊茎について横倒しさせるなどの重力刺激処理を行い、塊茎の皮層に含まれるアミロプラストの数・量や分布の差異が、塊茎形状や重力応答性の差異の発現に関与している可能性を裏付けるデータが得られ、沈降性アミロプラストと塊茎形状の成立との関係性について更なる理解を深めた。一方、供試材料間におけるPIN遺伝子の発現様式の差違、外生オーキシンを塊茎に添加する試験、重力応答中の塊茎におけるカルシウム局在などについて調査を進めたが、オーキシン・カルシウムと塊茎形成との関係性を示す興味深いデータを得られつつあるものの、データの再現性がやや不安定であり、令和2年度においても更なる反復試験を進めて検証する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては、オーキシン・カルシウムと塊茎形状成立との関係性を理解すること中心に研究を行う。特に、PIN遺伝子、外生・内生オーキシン、および、カルシウムと塊茎形状成立との関係性について、反復試験を行い、より精度を高めた解析を進める。PIN遺伝子の解析については、RNAの回収率がナガイモの粘液の影響で低いため、抽出方法の改良を行っている。また、エネルギー分散型X線分析法を用いて、塊茎先端部の細胞内のカルシウム微細局在とその動態について繰り返し解析し、沈降性アミロプラストを起点とする重力刺激の感受・伝達・屈性の仕組みについて本年度も研究を進めていく。
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