2019 Fiscal Year Research-status Report
野生種を活用したイネの新規種子脱粒性遺伝子座の同定と収量性改善への展開
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18K05594
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石川 亮 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (70467687)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 栽培イネ / 野生イネ / 栽培化 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯アジアを中心に世界で生産されるコメの約8割を占めるインディカ型栽培イネは、稔実種子が脱粒しやすいことから収穫時や運搬時に収量ロスが生じている。このため、脱粒に要する強度を人為的に調節することができれば増収が期待できる。しかし、栽培イネの非脱粒性は複数の遺伝子座の変異によって制御される量的形質であることがこれまでに明らかとなっており、既知の変異では生産地の収穫方法に対応した脱粒強度に調節することが難しい。本研究では、完全脱粒性を持つ野生イネ(Oryza rufipogon W630)と栽培イネ2品種(O. sativa日本晴・ジャポニカとIR36・インディカ)との交雑分離集団を活用することで、各栽培イネが有する脱粒性を低下させる特異的な自然変異を同定し、既知の遺伝子座との相互作用を解明するための実験系の構築を進めた。 日本晴(ジャポニカ栽培イネ)の非脱粒性に関与した遺伝子座については、初年度に推定した候補領域のさらなる限定を進めた。実験では候補領域をヘテロにもつ個体についた自殖種子を発芽させ、候補領域付近に座乗する2つのDNAマーカー間にて染色体の組換えを持つ系統を複数選抜した。これらの系統についた種子を用いた後代検定によってさらに候補領域の限定化を進める。またIR36(インディカ栽培イネ)の非脱粒性に関与した遺伝子座については、これまでに同定した2か所の遺伝子座についてそれら遺伝子座の種子脱粒性への効果検証を個別に実施し、両遺伝子座ともに効果が確認できた。しかし、片方の遺伝子座の対立遺伝子の違いによって、脱粒程度に大きな差が認められたことから、遺伝子座間の相互作用が示唆された。また今後、遺伝子座間の相互作用を詳細に評価するために、既知遺伝子座との関係を評価するための実験系統の作出を引き続き進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本晴(ジャポニカ栽培イネ)の非脱粒性を支配する遺伝子座として新たに同定したqCSS3については、候補領域のおよそ500kbにおいて新たな組換え個体の選抜を実施し、それらの自殖種子を獲得した。また、IR36(インディカ栽培イネ)の非脱粒性を支配する遺伝子座として同定されたqCSS2とqCSS7については、IR36の遺伝背景では脱粒程度の評価の差が非常に小さい場合も認められ、遺伝背景による可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
日本晴、IR36の非脱粒性に関与する各遺伝子座について、新たに野生イネの遺伝背景において効果を検証するための実験系統の作出を行う。また新規・既知の遺伝座間の相互作用を解明し、それぞれの遺伝子座が持つ効果を評価することで収量性への貢献度を明らかにする。
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Causes of Carryover |
今年度計上したオートクレーブの購入について、当初予定した機種を安価な機種に変更したことから、次年度使用額が生じた。繰越分については当初の計画に基づいて消耗品の購入を中心に執行する。
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Research Products
(5 results)