2018 Fiscal Year Research-status Report
冠水耐性遺伝子と浮稲性遺伝子を併せ持つ野生イネ種の洪水に対する応答
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18K05595
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
東 哲司 神戸大学, 農学研究科, 教授 (30231913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹山 大輔 神戸大学, 農学研究科, 特命助教 (20554249)
平野 達也 名城大学, 農学部, 教授 (30319313)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 野生イネ / 洪水適応 / 浮稲性 / 冠水耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
AAゲノムからHHJJゲノムを有する野生イネ170系統とO. graberrima 50系統において,浮稲性に関与するSNORKELs (SKs) 遺伝子および冠水耐性に関与するSUB1A遺伝子の存在の有無を調査した。SKs遺伝子についてはAAゲノムのほぼすべての野生イネ系統とO. graberrimaの系統に存在し,SUB1A遺伝子についてはOryza meridionalis, Oryza longistaminta, Oryza rufipogon のほとんどの系統に存在したが,Oryza barthii, Oryza glumaepatulaには存在しなかった。またBBゲノムからHHJJゲノムの野生イネにおいてはSKs遺伝子およびSUB1A遺伝子の存在は確認できなかった。 O. longistaminataの複数の系統を用いてSKs遺伝子およびSUB1A遺伝子の配列決定を行った。O. longistaminataのSK1遺伝子のアミノ酸配列は,O. sativaの遺伝子と比較してその相同性は95.6~96.3%であり, SK2遺伝子では90.6~95.4%,SUB1A遺伝子では96.5%であり,すべての遺伝子がO. sativaの機能型遺伝子との相同性が高く,洪水条件下でO. sativa種の浮稲や冠水耐性イネと同様の機能を有している可能性を示唆した。 次に,O. longistaminataの地下茎由来の成熟植物体を用いて,水位上昇処理を行った結果,供試したすべての系統でバングラデシュの浮稲品種と同等かそれ以上の節間の伸長促進を示し,浮稲性を示すことが明らかになった。さらにSKs遺伝子の発現解析を行ったところ,節間部位で発現の誘導が認められた。分げつ由来の幼植物体を用いて,冠水処理を行ったところ,明確に冠水耐性を示す系統はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請段階では,AAゲノムを持つ5種の野生イネ103系統のDNAを分析した結果, SUB1AとSK1/2遺伝子を併せ持つ系統がO. rufipogon, O. longistaminata,O. meridionalis に複数系統存在することを明らかにしていたが,これが野生イネ全般にいえることなのかどうかを調査するため,さまざまなゲノム組成の野生イネとO. glaberrima を含む220系統を用いて,SUB1AとSK1/2遺伝子をさらにスクリーニングした。O. glaberrimaの1系統において,冠水耐性遺伝子OsSUB1Aと配列が全く同じSUB1A遺伝子を持つものが発見され,この遺伝子の機能について解析を行った。これらの調査は当初の予定になかったため,少し研究が遅れ気味であったが,現在では概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は野生イネの実生を用いて実験する予定であったので,国立遺伝学研究所から入手した野生イネの種子の増殖を2018年度に図ったが,O. meridionalis の数系統からは種子が得られたが,O. rufipogonからは実験に必要な稔実種子を得ることができなかった。また,株分けで入手したO. longistaminataを短日処理を行うことで開花誘導し,種子を得ることを数度試みたが, 開花はした系統はいくつかあったが種子を得られた系統はひとつもなかった。そこで今後の実験では,O. meridionarlisについての研究は得られた種子を用い,O. longistaminataに関しては栄養繁殖したものを用いて,当初の研究計画に沿って行う方針である。まだ種子が得られていないO. meridioalisとO. rufipogonのいくつかの系統に関しては,前年に引き続き種子の増殖を図り,2020年度の研究に備える。
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Causes of Carryover |
十分な植物体数が得られなかったため,エチレン,低酸素,ジベレリンによる節間の伸長応答応答と遺伝子の発現の研究は次年度行うことに変更した。そのため,翌年度分として請求した助成金と合わせて使用することとした。
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Research Products
(1 results)