2019 Fiscal Year Research-status Report
高温耐性戦略としての高窒素施肥によるサツマイモの窒素固定能促進と地表面被覆増加
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18K05596
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
門脇 正行 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (00379695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 真悟 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (00346371)
城 惣吉 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (20721898)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | サツマイモ / 植被率 / 窒素固定 / 高温回避 / 収量 |
Outline of Annual Research Achievements |
圃場条件でサツマイモ3品種(‘ベニアズマ’,‘べにはるか’,‘すずほっくり’)を窒素3水準(10a当たり0,5,15kg)で栽培し,生育初期の植被率,NDVI,地温,窒素固定寄与率(15N自然存在比による分析)および収量について調査を行った.‘ベニアズマ’,‘べにはるか’では,高窒素施肥条件によって生育初期の植被率が上昇し,それに伴い地温上昇が抑制されること,植被率と窒素固定寄与率との間には正の相関関係があることが確認された.また,‘ベニアズマ’ではこれまでの試験結果と合わせて解析した結果,窒素固定寄与率と全乾物重または上イモ生重は有意な正の相関関係にあった.しかし,植被率の低い‘すずほっくり’では異なる傾向が確認された. さらに,温度傾斜型チャンバー内で1/2000aポットにより圃場試験と同じ窒素3水準で‘ベニアズマ’と‘べにはるか’を栽培した.温度傾斜型チャンバー内を低温区,中温区,高温区と設定して地上部を垂直に誘引して栽培を行った.土壌および植物体の窒素濃度を測定し,それぞれの窒素収支から推定窒素固定量を算出した.温度の上昇に伴い,両品種の乾物生産および塊根生産は減少した.また,窒素固定量も温度の影響を受けて増減することが示唆された.さらに,窒素施肥量を増加させることで乾物生産,塊根生産,窒素含有量および窒素固定量は増加した.これらの結果から,厳しい高気温条件下におけるサツマイモ栽培では窒素施肥量を増加させることで窒素固定量が増加し,それに伴い乾物生産が増加することで高温による収量低下が抑制されるものと考えられる. 以上の2019年度の結果から,サツマイモ栽培における窒素施肥量の増加は植被率の拡大を促し地温上昇を抑制する効果があり,さらに乾物生産を向上させることで窒素固定が増加し,それらが収量増加に寄与することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の試験では窒素施肥量と収量または窒素固定寄与率との関係について再現性が確認できず,2019年度で再試験を行うことになった.2019年度では再現性が確認できただけでなく,窒素施肥量と生育初期の植被率または地温との関係,植被率と窒素固定寄与率との関係,窒素固定寄与率と収量との関係も明らかにすることができたため,研究内容を大きく進めることができた.また,得られた結果は,本研究の仮説を概ね立証するものとなっている. さらに,温度傾斜型チャンバーを用いた高温処理試験も同時に行い,その結果から窒素施肥量増加が窒素固定量の増加につながり,高温による乾物生産および塊根生産の減少を抑制することが確認できたが,この結果も仮説の通りとなっており,当初の研究目的の達成に近づく成果が得られていると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
計画段階では最終年にそれまで得られた知見を基に圃場条件下でビニルマルチによる地温変化と窒素施肥量が植被率,窒素固定および収量に及ぼす影響について検討する予定であったが,昨年度の圃場試験およびTGC内での試験によって地温との関係性も概ね検討できた.そのため,今後は本研究の作用機序がサツマイモ全般に適用されるのかを検討することに重点を置くこととする.具体的には10品種以上の新旧品種を用いて昨年度の圃場試験と同様の設計を行い,品種間比較を行う予定である.その結果から,窒素施肥量,植被率,高温回避,収量増加の点で各品種の特性を明らかにし,サツマイモ栽培全般に適応できる知見かを見極める.さらに,品種特性を明らかにすることで,今後のサツマイモ育種において高温耐性付与に寄与する知見が得られることが期待される.
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Causes of Carryover |
外部委託による15N自然存在比の分析において,分析するサンプルの準備が年度予算執行期限に間に合わないものもありサンプル数が減少したことに加え,外部での分析費用が当初想定されたものよりも低価となったため,分析費用の総額が低く抑えられることになったため,次年度使用額が生じた. 次年度となった使用額については2019年度に分析できなかったサンプルの分析費用に使用するとともに,今年度の実験の供試品種数を増加させることに伴い15N分析点数も増加することが予想されるので,その分析増加分の費用に充てる.
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