2018 Fiscal Year Research-status Report
ダイズの低リン耐性を向上する生理学的機序:生育相別のリン獲得・利用機構の基盤構築
Project/Area Number |
18K05599
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
松村 篤 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (30463269)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ダイズ / 遺伝資源 / リン吸収 / アーバスキュラー菌根菌 / 難溶性リン / 根系構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的にリンは初期生育時に重要な役割を果たすことが知られているが,栽培期間が比較的長いダイズには様々な生育相が存在し,各生育相によってリン要求量が異なる.栽培期間を通じて安定的にリンを供給するためには,各生育相におけるリン獲得能を高めることが重要であるが,生育相別のリン獲得能に関する知見は得られていない.また,植物が有する多様なリン獲得戦略を網羅的に解析してリン獲得能を評価した研究も極めて少ない.そこで本研究は,世界のダイズコアコレクションを用いて,生育相やリン獲得戦略別にリン吸収利用の系統間差異を調査し,ダイズのリン栄養育種につながる有望系統の探索とリン獲得と利用機構の基盤構築を目指す. 種子養分の依存時期における根系の低リン応答反応を比較した結果,リン無施肥区で根の乾物重を増大させるものや側根数と主根長がリン無施肥区で増加するものがそれぞれ数品種存在した.これらの品種は,低リン条件下において他の品種と比較して早期に根系を発達させてリンを吸収できることが期待される。栄養成長期における低リン応答反応を比較した結果,低リン条件下で栽培すると、すべての品種で生育量が減少したが、その減少程度は品種間で異なり,地上部乾物重および地下部乾物重の減少程度が特に小さいものを2品種選抜した. 次に,品種間におけるアーバスキュラー菌根(AM)菌接種効果の変動を調査した.AM菌の接種はリン施肥条件に関わらず植物体の生育向上をもたらし,AM菌接種によって総乾物重が2倍近くまで上昇した品種もあれば,生育が抑制された品種もあり,AM菌接種効果には品種間で差が存在することが示唆された。難溶性リン利用能(リン酸アルミニウム)の評価試験によって,難溶性リンの利用能が高いと推察される1品種を選抜することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
根系構造の解析については,種子内養分に大きく依存している幼若期と栄養成長期それぞれにおいて低リン環境に応答して根系構造が変化する品種あるいは低リン耐性が強い品種を選抜することができた.現在は,幼若期とV3期における根系構造と低リン耐性との関連性について解析中である.低リン条件下における菌根菌の依存度が品種間で異なることは示されたが,接種した菌根菌以外の菌根菌が土壌に混入したことから,再度試験を実施する必要がある.難溶性リンの試験に関しては,一定の成果は得られたが栽培環境や施肥条件を含め再度検討する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に実施した研究の内、菌根菌と難溶性リンの試験については次年度も継続して行い,品種間差を明らかにし,有望品種を選抜する.菌根菌の試験については,リン酸トランスポータの発現量の比較もあわせて実施予定である.根系構造の研究については選抜した品種についてさらに詳細な解析を行い,低リン耐性と根系構造との関連性を探る.土壌中のリンに応答した局所的な根系発達についても評価方法を確立した上で研究に取り組む.
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Causes of Carryover |
今年度に購入したダイズのコアコレクションを用いて採種を試みたが、全ての品種について種子を得ることができなかった。品種別に播種時期を検討する必要性があると考えられる。次年度早々に実験を開始するため、ダイズコアコレクションの購入代金として約1万5千円を持ち越した.
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