2018 Fiscal Year Research-status Report
Functional analysis and application of nitrogen fertilizer-responsive rice amylases
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18K05605
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
黒田 昌治 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 上級研究員 (30355581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝倉 富子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (20259013)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イネ / コメ / 品質 / 窒素肥料 / アミラーゼ / デンプン / 遺伝子発現 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
出穂期の窒素追肥は、コメの増収をもたらす一方で食味や加工特性を低下させることから、農業生産向上には両者の負の相関を解消する必要がある。我々は窒素追肥に応答したベータアミラーゼ3および5、アルファアミラーゼ3Eといったデンプン分解酵素の発現亢進を初めて明らかにした。そこで本研究では、窒素応答型アミラーゼ遺伝子群の発現特性や、それぞれの酵素がデンプン構造のどの部分をどう変化させているかを解析し、これらの機能不明アミラーゼ群と品質の関係性を明らかにする。さらに、窒素応答型アミラーゼ遺伝子の欠損変異等を利用して、新たな品質特性を持った育種素材の開発を進める。 本年は、窒素追肥がデンプン構造に影響するかを解析し、デンプン鎖長が変化することを明らかにした。また電子顕微鏡によるデンプン粒直接観察の予備実験およびベータアミラーゼ抗体の作成を行った。さらに、ベータアミラーゼ3および5(BAMY3、BAMY5)、アルファアミラーゼ3E(Amy3E)の遺伝子破壊系統の作出を行い、3重破壊体と推定される個体を得た。これまでの結果を総合的に考察すると、デンプン鎖長の変化は研究対象としたアミラーゼ群の発現亢進によってもたらされる可能性が高いと考えられた。また、その変化はデンプン粒の形態までに影響するほどではなく、これまでのコメの外観品質や物理的強度からは推定できない新たな結果を明らかにできた。今後はデンプン鎖長の変化とアミラーゼ発現との関連性に着目して研究を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
圃場での窒素追肥試験、および人工気象機を用いた窒素追肥試験を行った。中村らの方法(Biosci. Biotechnol. Biochem. 2014)を用いてデンプンの鎖長分布を見積もったところ、人工気象機での窒素追肥区では、標準区に比較して短いデンプン鎖の比率が有意に高くなり、追肥がデンプン構造に影響することが示唆された。デンプン構造解析を優先した関係で、アミラーゼ活性等の測定は行わなかった。透過電験による直接観察を行ったが、追肥の有無によりデンプン粒の形態に特段の差は見られなかった。これらの結果については、次年度も試験を反復し、再現性を確認する必要がある。 窒素追肥に応答して発現が増加する遺伝子のうち、アルファアミラーゼ3E、ベータアミラーゼ3およびベータアミラーゼ5の3つのアミラーゼ遺伝子は、デンプン構造に直接的な影響を与える可能性が考えられる。そこで、ゲノム編集を用いてこれらの遺伝子を破壊することを試みた。遺伝子多重破壊を迅速に行える独自のCRISPRタイプのゲノム編集ベクターを開発し、それを用いて特に多重破壊体の取得を優先して遺伝子導入を行った。塩基配列解析の結果、3重破壊体と推定される個体を複数同定できた。ベータアミラーゼ3および5の2重破壊体の作出も試みたが、目的個体を得ることができず、標的配列が不適切だったと考えられる。各遺伝子の単独破壊体の作出については、多重破壊体の取得を優先した関係で次年度に行うこととした。 ベータアミラーゼの機能に関する基礎的データを得るために、ベータアミラーゼ3および5を認識する抗体を作成した。しかし、完熟種子の抽出タンパク質では抗体に反応するバンドは検出できなかった。登熟途上での検出も試みつつ、抗体の特異性についても再検討を行い、必要に応じて再度の抗体作成を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
圃場での窒素追肥試験、および人工気象機を用いた窒素追肥試験を再実施し、デンプンの鎖長変化やデンプン粒の形態観察などについて、30年度の結果が再現されるかを検討する。 アミラーゼ3重破壊体については、2世代進めて種子を増殖し、可能であればデンプンの鎖長変化等を解析する。2重破壊体、単独破壊体については31年度中に取得を目指す。 発現解析用に9種のベータアミラーゼプロモーターGUS融合遺伝子を導入したイネを作出する。ベータアミラーゼ遺伝子の中には開始メチオニン位置が不明確なものが含まれるため、まずRACE法によってプロモーター領域を特定したのちにGUS融合遺伝子を作製する。あわせて、ベータアミラーゼ3および5の過剰発現体を作出する。
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Causes of Carryover |
課題採択に備えて一部の実験を前倒しで実施していたこともあり、30年度は圃場試験やDNA実験に予想したほど消耗品費がかからなかった。次年度は様々な組換えイネの作出や精密分析試験を実施するため、30年度より消耗品費あるいは委託分析費がかかると見積もられる。次年度使用額はそちらに充当する。
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Research Products
(2 results)