2018 Fiscal Year Research-status Report
作物の花形質改良による送粉昆虫の行動制御と種子生産性の向上
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18K05612
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
吉岡 洋輔 筑波大学, 生命環境系, 助教 (50462528)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 種子生産性 / アブラナ / 送粉昆虫 / 選好性 / 遺伝子 / 育種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では3年間の研究実施期間を通して、アブラナ属作物の花形質に対する送粉昆虫の先天的・後天的選好性を解明し、昆虫の選好性に深く関連する花形質、特に紫外線反射率の遺伝性を明らかにすることを目標にしている。平成30年度は、花弁の紫外線反射率に多様な変異をもつセイヨウナタネをモデルとして用い、花と花房レベルでの行動生態学実験を行った。また、遺伝解析のための遺伝資源の固定化を進めた。具体的な研究内容とその成果は次の通りである。セイヨウナタネ遺伝資源から当日開花した花を紫外線撮影用レンズと紫外透過可視吸収フィルターを装着したデジタルカメラで撮影した。得られた画像に基づいて各系統の花弁の蜜標の明瞭さを2分類(明瞭、不明瞭)で、紫外線反射程度を3分類(反射型、吸収型とそれらの中間型)で評価した。その結果、セイヨウナタネでは約半数の系統が花弁に明瞭な蜜標をもち、紫外線反射程度では7割以上の系統が中間型であった。同一個体内の着花位置や生育ステージの異なる花間には、花のサイズや形状には差があったものの、花弁の蜜標には大きな差は認められなかった。蜜標が異なる生花と花房を用いた行動生態学実験によりクロマルハナバチの選好性を調査した結果、クロマルハナバチは学習の有無に関わらず特定の蜜標に対する選好性を示さなかった。この結果は、過去に人工花を用いて行った実験結果とは異なるものであり、供試植物や学習方法等の実験手法を改良し再実験を行うことが必要であると考えられた。ゲノムワイド関連解析の材料となるナタネ遺伝資源約100系統と、量的形質遺伝子座解析の親系統候補の自殖後代を採種した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り、本年度は花弁の紫外線反射率に多様な変異をもつセイヨウナタネをモデルとして用い、花と花房レベルでの行動生態学実験を行うとともに、遺伝解析材料の準備を進めた。行動生態学実験では、過去に行った人工花を用いた実験とは異なる結果が得られたため、次年度以降に課題を残した。また、遺伝解析材料となる遺伝資源は固定が不十分だったため、予定(F1種子の採種)を変更し固定化を進めた。以上の点から、本課題の現在までの達成度を「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はゲノムワイド関連解析のための遺伝資源のDNAを採取し、次世代シーケンス解析によりジェノタイピングデータを得る。また、QTL解析の親系統間のF1世代種子を得る。行動生態学実験については、供試材料や学習方法等を再検討するなど、最適な実験系の構築のための予備試験を実施する。
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Causes of Carryover |
次年度は交付申請時の計画どおり、遺伝解析に関わる消耗品や植物の栽培管理に関わる物品等の購入、本研究の実験補助を行う技術補佐員等の雇用、学会での成果発表に関連する出張及び投稿論文の英文校閲に研究費を使用する予定である。次年度使用額152,711円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて上述の研究計画遂行のために使用する。
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