2019 Fiscal Year Research-status Report
伝統園芸植物ツツジの本来の品種名を取り戻せ―遺伝資源流出と品種改良史の探求
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18K05617
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
小林 伸雄 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (00362426)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中務 明 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (40304258)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 伝統園芸植物 / 園芸品種 / 栽培植物命名規約 / 遺伝資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
海外に流出したツツジ園芸品種を中心に、品種名の登録修正やそれらの品種が欧米で育成された品種への遺伝的影響の評価を目的に、以下の調査研究を実施した。
SSRマーカー解析:2018年5月に英国の5か所の植物園等で採取した日本の品種と推定されるツツジ13個体と、比較対象として島根大学圃場等で採取した日本のツツジ品種・野生種を供試し、5種類のSSRプライマーセットによるPCR増幅バンドを比較した。その結果、日本のモチツツジ品種‘青海波’やサツキ品種‘紅万重’と同定される個体等があることが判明した。 文献調査:横浜開港資料館所蔵の欧米向け種苗輸出カタログ (横浜植木 (株) ) (1891-1936年のうち16か年分) のアザレアページの複写を使用し、当時輸出されたツツジ園芸品種名の確認を行った。その結果、モチツツジ‘青海波’やサツキ‘紅万重’等に相当する学名あるいはローマ字記載の品種名が輸出カタログに掲載されており、同定された品種の一部はこの時代に輸出されたと推察される。 葉緑体DNAマーカー解析:大輪系園芸品種における重要な原種と考えられるキシツツジ型の葉緑体DNA識別マーカーを開発し国内外のツツジ園芸品種を解析した。その結果,日本だけでなく欧米で発達した大輪・中輪系ツツジ品種の大半がキシツツジ型の細胞質を有し,キシツツジならびにその関連品種が品種成立に大きく関与したことが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英国の植物園等において採取した日本の品種と推定されるサンプルについてSSRマーカー解析を行い、解析結果に基づく品種同定を行った。また、明治から昭和期にかけての種苗輸出用カタログ資料における記載品種の調査を行った。これらの研究結果について品種名の登録修正を行うための報告資料を取りまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
R1年度に引き続き、未同定部分の品種に対応すると考えられる追加サンプリングを行い、SSRマーカー解析をはじめとした遺伝子解析を進める。また、DNA解析データと文献調査情報に関して取りまとめた報告書を英訳し、RHS等において品種名の登録修正に関する手続きを開始する。 また、海外に渡った日本の古典園芸品種が欧米のポットアザレア等の品種改良に及ぼした遺伝的関与について、DNAマーカー等を用いた評価を推進する。
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Causes of Carryover |
研究がおおむね順調に進行したこと、ならびに新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより学会等の中止や延期があったため、当該助成金の物品費や旅費に一時的に残額が生じた。次年度に随時使用する計画である。
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[Book] しまねの園芸研究2019
Author(s)
江角智也・小林伸雄・浅尾俊樹編
Total Pages
61
Publisher
島根大学生物資源科学部
ISBN
978-4-9908297-2-8