2018 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of genealogy and genome admixture of indigenous citrus varieties by statistical genetics analysis
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18K05634
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
清水 徳朗 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 上級研究員 (90355404)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カンキツ / DNAマーカー分析 / ゲノム / 親子関係 / 系譜 / 遺伝資源 / 遺伝子型 / 遺伝的多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、国内で収集された多数のカンキツ品種、系統を中心に、それらの詳細な遺伝解析から来歴不明のカンキツ品種の親子関係を推定し、品種の系譜と来歴を明らかにすることでカンキツの多様性拡大の過程を理解し、育種や重要遺伝子の特定への利用を図ることを目的とする。小課題1では、農研機構でこれまでに収集し、維持されてきたカンキツ遺伝資源に加え、国内の複数箇所で収集したカンキツ遺伝資源を対象に高精度DNAマーカー解析を実施した。カンキツ遺伝資源の解析では、350点を対象にSSRマーカー分析を実施し、品種の同一性を確認するとともに親子関係の推定を試み、来歴が不明であった複数の品種間で親子関係を見出した。また、自生のものを含むタチバナ遺伝資源68点を日本国内の複数の地点で収集し、それらの解析からすでに見出してきた3種のタチバナとは異なる、新規なタチバナ系統を国内の複数地点で見出し、タチバナ-Dと仮称した。カンキツ類の遺伝的多様性の解析や系譜解明については本研究が大きく先行しており、タチバナ-D系統の発見も世界初の成果である。現時点でこの系統と親子関係が推定された品種は特定されていないが、これまでの結果から、国内に自生するタチバナが当初想定していたよりも幅広い遺伝的多様性を現在も維持していることが強く示唆された。小課題3では、親子関係の高精度な検証を目的に、SSRマーカー解析で遺伝的に重複のないことを確認したカンキツ主要品種150点を選定し、高速DNAシーケンサを利用するGRAS-Di法を利用して網羅的な多型解析を先行して実施した。予備的な解析から、1品種あたり10万前後の遺伝子型情報が得られており、多型が検出された座のゲノム内分布も一様であることが確認できた。今後、多型データを精査するとともに品種を追加することで、親子関係の推定とその妥当性の統計学的評価に供試する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小課題1では本年度350点の評価を完了した。分析用のDNA抽出に時間を要したため未評価のものが300点ほど残されているが、DNA抽出を完了次第、SSRマーカー分析を実施して遺伝的同一性を検証し、系譜推定に進む予定である。研究代表者はこれまでに、日本国内で発生した複数のカンキツ品種の親としてタチバナが重要な役割を果たしてきたことを先行研究で明らかにしてきたが、国内のタチバナ遺伝資源の包括的で詳細な遺伝解析はこれまで実施されていなかった。今年度、国内の主要な自生地や皇室等にゆかりのタチバナの分析用試料を入手する機会を得、タチバナ遺伝資源の収集と評価が大きく前進した。小課題2では、宮崎県内の複数の関係者の協力が得られ、本年度計画を一部前倒しして県内のヒュウガナツ発生地を現地調査して遺伝資源を予備的に収集し、SSRマーカー分析を実施した。2019年度に再度宮崎県を訪問し、あらためて遺伝資源の調査と試料収集を計画している。小課題3では、主要な品種を対象にGenotyping by Random Amplicon Sequencing-Direct(GRAS-Di)法による網羅的な多型解析法を先行して実施した。当初計画ではGenotyping-by-Sequencing(GBS)法の利用を予定していたが、予備的な評価から本法がGBS解析よりも信頼性が高く、コストも同程度以下であることが確認できたので、まず主要品種について先行してデータを取得して解析基盤構築に取りかかっている。分析およびデータ解析に関して大きな問題はなく、すでに分析済みのサンプルから順次データ解析を行い、親子関係の推定に供試する。このように、準備の整った研究項目から随時先行して取り組んでおり、関係者の協力も得られて順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
「小課題1)固有の遺伝子型を持つ在来カンキツ品種の選抜」では、本研究の実施に必要となる材料の収集と評価に今年度取り組み、一部未完了のものがあるが2019年度の前半には完了予定である。分析結果が揃い次第、固有の遺伝子型を持つ品種・系統を選抜して小課題2に供試する。「小課題2)遺伝子型にもとづく在来品種間の親子関係の推定」では本年度一部を先行して実施し、新たなタチバナ系統を見出すなどの成果を得ている。宮崎県内のカンキツ遺伝資源調査では現地の一部が保護対象地域であるために手続きに時間を要する見込みであるが、関係者の協力を得て準備を進めており、計画通り今年度中の調査を予定している。また、「小課題3)親子品種間でのゲノム領域の伝達様式の評価」においても本年度すでに先行して主要品種の網羅的遺伝子型情報の取得を完了し、分析方法とデータ解析についてもおおむね問題のない結果が得られている。このように、小課題1と小課題2の解析から祖先品種やその後代品種が推定できたものについて、準備が完了したものから順次同様の解析に取り組む予定である。解析材料の収集と評価については大きな問題はなく、現地調査では必要な手続きを確実に履行して実施する。試料の分析やデータ解析についても、本研究の目標達成に向けて最新の手法を適宜反映させながら計画に沿って取り組む。
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Causes of Carryover |
小課題1では当初分析試料のDNA抽出を外注する計画としていたが、依頼単価が大幅に上昇したために断念し、代わりに独自に取り組むこととした。そのため、所要単価は低く抑えることができた反面、作業に時間がかかるため分析点数を当初計画よりも減らさざるを得なくなり、その分所要経費に差額が生じた。本年度の差額は次年度のDNA抽出経費に充当する。 小課題2では宮崎県の調査を学会開催に合わせることで旅費を節約し差額が生じた一方、現地関係者との協議から、当初一回で完了予定の調査が2回程度必要と考えられたことから、本年度削減分による差額を次年度の追加調査分として充当し、目標の確実な達成を図ることとした。 小課題3では分析方法の変更にともない経費を若干削減することができ、また他の関連研究との分析と相乗りすることで所要経費を抑えることができ、差額が生じた。これまでに得られた予備的な結果から、小課題3の解析には当初計画より多くの点数を分析することが望ましいと推定され、差額を充当することで試料とデータの充実を図ることが可能となり、本研究の目標達成に大きく貢献する。
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Research Products
(3 results)