2018 Fiscal Year Research-status Report
Attempt at identifying the male-sterile gene derived from Satsuma for efficient seedless citrus breeding.
Project/Area Number |
18K05635
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
後藤 新悟 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 主任研究員 (60433215)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 雄性不稔性 / カンキツ / DNAマーカー / SSRマーカー / 稔性回復遺伝子 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はアプローチ1「MS-P1領域におけるDNAマーカーの高密度化により原因遺伝子候補の数を絞ること」において、MS-P1領域で高密度にSSRマーカーを作製し、ジェノタイピングに使えるかどうか予備試験を行うことを、アプローチ2「MS-P1領域近傍のCitAMS1が原因遺伝子の最有力候補であると示すこと」において、興津46号と興津56号からCitAMS1をクローニングし、雄性不稔性原因遺伝子であるかどうかを検証することを計画していた。 アプローチ1について、MS-P1領域において新たに14個のSSRマーカーを設計した。親子関係が判明しているキシュウミカン、クネンボ、ウンシュウミカン、‘スイートスプリング’、ハッサク、スイートオレンジ、興津46号を供試し、14マーカーを用いてジェノタイピングを行った。その結果、9マーカーにおいて波形ピークが明瞭に生じ、正しく親子関係が示され、雄性不稔性原因遺伝子のマッピングに利用可能であることが示された。 アプローチ2について、以前の解析ではクレメンティンのゲノム配列(phytozome DB)を用いて、MS-P1領域近傍にCitAMS1が存在していることが示唆されていたが、新たに公開されたウンシュウミカンゲノム配列(http://www.citrusgenome.jp/)を用いてCitAMS1の場所をBLASTしたところ、MS-P1領域とは離れた場所に位置していた。そこで、興津46号由来CitAMS1と雄性不稔性との相関関係を調べるため、CitAMS1の近傍にSSRマーカー(ProAMS1)を設計し、興津46号×興津56号交配集団を供試し、雄性不稔性とProAMS1の遺伝子型との相関を調べた。その結果、興津46号由来アリルと雄性不稔性との相関は確認できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アプローチ2の結果により、当初有力候補遺伝子と想定していたCitAMS1が雄性不稔性原因遺伝子ではないことが示唆された。また、72の品種・系統と4つの交配集団(‘スイートスプリング’×カンキツ興津56号、‘スイートスプリング’ב西南のひかり’、‘はれひめ’×カンキツ興津63号、カンキツ興津46号בカラ’)の細胞質の由来、MS-P1領域のハプロタイプブロックの由来する祖先品種、その組み合わせ、そして1葯あたりの花粉数との相関を検証した結果により、カンキツの雄性不稔性発現にはキシュウミカン由来細胞質が必要であり、かつMS-P1領域の由来する祖先品種の組み合わせによって決定されることが示された。この結果と他の作物における雄性不稔性発現メカニズムと合わせて考察すると、カンキツの雄性不稔性は細胞質雄性不稔と核の稔性回復遺伝子によるモデルとよく一致する。すなわち、キシュウミカン由来細胞質は雄性不稔性を持ち、核のMS-P1領域にコードされた稔性回復遺伝子は由来する祖先品種によって、活性が違っており、その活性の総和による稔性回復程度の違いによって雄性不稔性の程度が決定されるモデルが想定される。以上の考察により、カンキツ雄性不稔性原因遺伝子は当初想定していたCitAMS1ではなく、稔性回復遺伝子として知られているPPR遺伝子である可能性がある。そのため、今度の研究計画を大きく変更する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、アプローチ1によって作製されたMS-P1領域にマップする9マーカーを用いて、興津46×興津56号、‘スイートスプリング’×カンキツ興津56号、‘スイートスプリング’ב西南のひかり’、‘はれひめ’×カンキツ興津63号、カンキツ興津46号בカラ’を供試し、雄性不稔性原因遺伝子のマッピングを進める。 雄性不稔性原因遺伝子である可能性を持つPPR遺伝子は非常に多くのファミリーをもつ遺伝子であるため、相同性検索では非常に多くの遺伝子が候補として挙げられてしまう。そこで、当初の予定を以下のように変更する。MS-P1領域のハプロタイプブロックがクネンボ由来でホモ化されており、非常に強い雄性不稔性を示すKyOw14とクネンボとポンカン由来でヘテロ化されており、雄性稔性を示す‘不知火’を次世代シークエンサーによってMS-P1領域の配列を読み、比較することで、雄性不稔性原因遺伝子の候補を探索することを試みる。この計画変更のため、2020年の予算の約半分を2019年に前倒しして次世代シークエンサーの外注予算にあてる予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の消耗品の購入にあてるため、前年度の予算を一部繰り越した。
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