2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K05641
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
宇佐見 俊行 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (50334173)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 植物病原糸状菌 / 病原性 |
Outline of Annual Research Achievements |
糸状菌の一種である半身萎凋病菌(Verticillium dahliae)は、広範な植物に萎凋性の病害を引き起こすが、その宿主決定機構は解明されていない。擬有性生殖による菌株の交雑を用いたこれまでの研究により、本菌のトマトに対する病原性を決定すると思われるゲノム領域が見出されている。本課題では、半身萎凋病菌のトマトに対する病原性を決定する遺伝子の解明と、トマト以外の植物に対する病原性を決定するゲノム領域の特定を目指した。 まず、トマトに対する病原性の決定に関与すると推定されるゲノム領域に相当するBACクローンをゲノムライブラリーから8種類選抜して混合し、ハイグロマイシンB耐性遺伝子とのco-transformationにより、トマトに病原性を持たない菌株に導入した。その結果、トマトに対して病原性を獲得した形質転換株が複数得られた。しかし、病原性を獲得させる作用を示すゲノム領域は複数存在し、また、それぞれの領域を導入した菌株の病原力は、野生株に比べて弱かった。これらのことから、トマトに対する病原性を決定する複数の遺伝子が複数の領域に分散して存在し、これらが相加的に働くことで強い病原力が構築されていると考えられた。 一方、ピーマンに病原性を示す菌株と示さない菌株を擬有性生殖により交雑し、得られた組換え株のピーマンに対する病原性を調査すると同時に、DNAマーカーによる遺伝的解析を行った。その結果、ピーマンに病原性を示す組換え株だけが持つDNAマーカーを見出すことができた。従って、このDNAマーカーの周辺のゲノム領域が本菌のピーマンに対する病原性の決定に関与する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、半身萎凋病菌のトマトに対する病原性を決定する領域を特定し、病原性決定への関与を形質転換により確認できた。また、トマト以外の植物に関しても検討を進め、ピーマンに対する病原性に一致するDNAマーカーを見出すことができた。従って、ピーマンについてもトマトと同様に検討を進め、病原性決定に関与するゲノム領域およびそこに含まれる遺伝子を明らかにすることができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
トマトに対する病原性については、病原性決定に関与する複数の遺伝子が複数のゲノム領域に分散して存在する可能性が示されたため、まずこのうちの1つを選択し、その領域を分割してクローニングしたフォスミドクローンを非病原菌に導入して病原性の獲得を確認するとともに、領域の塩基配列情報に基づいて病原性決定に関わる遺伝子を推定する。また、ピーマンに対する病原性については、病原性に一致するDNAマーカーが座乗する染色体を明らかにして周辺にさらなるDNAマーカーをデザインし、より多くの組換え株を用いて病原性に一致するゲノム領域の絞り込みを行う。そして、トマトの場合と同様にして、形質転換による病原性決定への関与の確認や配列解析による遺伝子推定を順次行う。
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