2018 Fiscal Year Research-status Report
Proteomic study of plant epidermal tissues in response to phytopathogen invasion
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18K05642
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
西内 巧 金沢大学, 学際科学実験センター, 准教授 (20334790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉置 大介 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 特命助教 (20793053)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プロテオミクス / 表皮 / 病原糸状菌 / 侵入抵抗性 / 気孔 / 植物免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物表層において病原菌との相互作用に関与しているタンパク質を明らかにするため、病原糸状菌を接種した植物の表皮組織を用いたプロテオーム解析の実験系の構築を進めている。植物病原糸状菌であるムギ類赤かび病菌は小麦などに感染し,人畜に深刻な健康被害を及ぼすかび毒を産生する.付着器を形成しない赤かび病菌は、開花したムギ類の花に加えて、外穎表皮の気孔からも侵入することが知られており、赤かび病菌に罹病性を示すシロイヌナズにおいても葉の気孔から組織内へと侵入することを明らかしている。本研究では、ムギ類赤かび病菌に対する侵入抵抗性に関与するタンパク質の同定を目的とし,感染葉の表皮においてプロテオーム解析を進めている。赤かび病菌の分生子懸濁液を滴下接種した葉の表皮組織からタンパク質を抽出し、精製後に濃度測定を行い、トリプシン消化・脱塩後のペプチド断片をnanoLCで分離して、質量分析計(Thermo Orbitrap QE plus)を用いてMS/MSによる分析を行った。抽出溶液、精製工程、及びnanoLCカラムと分離方法について検討を進めた結果、シロイヌナズ及び赤かび病菌のそれぞれ約5000種と約1000種のタンパク質を同定し、大規模なラベルフリー定量が可能な実験系を構築した。また、赤かび病抵抗性を示すein3変異体では,接種後の表皮における気孔の開度が野生株に比べて有意に小さいことを明らかにし、確立した表皮プロテオミクスの実験系を用いて解析を行ったところ、アブシジン酸応答に関わる複数のタンパク質の発現が野生株に比べて有意に上昇していることが分かった。また、野生株に比べて赤かび病に罹病性を示すpen1変異体では、ユビキチンープロテアソーム系に関わる多くのタンパク質群が有意に変動していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナの野生型を用いて、表皮組織からのタンパク質回収について、検討を行った。タンパク質の発現変動に与える影響を極力少なくするために、表皮組織の回収の工程を葉1枚あたり3分以内で完了し、また、回収した表皮組織について、蛍光顕微鏡を用いてクロロフィルの自家蛍光の観察を行い、葉肉細胞のコンタミが少ないことを確認した。シロイヌナズナの葉に赤かび病菌の分生子を滴下接種した24時間後の表皮組織を用いた解析で、シロイヌナズ及び赤かび病菌のタンパク質をそれぞれ約3000種と約500種を同定したが、タンパク質の量の増加、精製過程、nanoLCのカラム長の変更とペプチドの分離に要するグラジエントの時間延長、赤かび病菌のデータベース等について、再検討して改善を進めた結果、それぞれ約5000種と約1000種のタンパク質を安定して検出できる実験系を確立した。さらに、赤かび病抵抗性を示すein3変異体では,接種後の表皮における気孔の開度が野生株に比べて有意に小さいことを明らかにし、表皮を用いたプロテオミクス解析から、複数のアブシジン酸応答に関わるタンパク質の発現が野生株に比べて有意に上昇していることが分かった。一方、赤かび病に罹病性を示すpen1変異体では、ユビキチンープロテアソーム系に関わる多くのタンパク質群が有意に変動していることを見出した。これらの結果から、表皮プロテオミクスの実験系をほぼ確立できた状況であり、更なる改善と多様な変異体を用いて解析を進めることで、植物表層において病原菌との相互作用に関わるタンパク質の同定を進めて行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、検出タンパク質の数として大幅な改善が見られたが、病原菌由来のエフェクターを含む低分子量のタンパク質の検出は難しい状況にある。質量分析計による検出工程において、植物由来の高分子量のタンパク質からは多くのペプチド断片が生じるため、感染初期過程における病原菌由来の蓄積量の少ない低分子量タンパク質の検出を困難にしていると考えられる。赤かび病菌も感染過程においても多様な低分子量タンパク質を発現させていると考えられるため、これらを効率よく検出するため、接種した植物表皮から抽出したタンパク質を限外ろ過により、低分子量タンパク質を分離させて解析することで改善を試みたい。また、精製過程での定量分析への影響について、限外ろ過しない試料についても同様に解析を進めて、比較検討を行う。赤かび病に強い抵抗性を示すRPS27aAとRPS27aBの二重変異体を用いて、表皮プロテオミクス解析を進めたい。また、ユビキチン化タンパク質やリン酸化タンパク質を精製濃縮して、これらの翻訳後修飾に着目した表皮プロテオミクス解析も進めて行く。
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Causes of Carryover |
実験系の構築に多くの時間を費やし、予定よりも解析サンプル数が少なかったため、次年度使用額が生じた。2019年度は、構築した表皮プロテオミクスの実験系を用いて、多数のサンプルを解析予定であり、また、ユビキチン化等の翻訳後修飾に関するプロテオミクスについても取り組む予定である。
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Research Products
(5 results)