2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K05646
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
多賀 正節 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (80236372)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 糸状菌 / 染色体 / ヘテロクロマチン / 走査電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はウリ類炭疽病菌(Colletotrichum orbiculare)を用い,植物病原糸状菌染色体のヘテロクロマチンの構造を走査電子顕微鏡(SEM)とFISHによって明らかにすることである。平成30年度はSEMによる解析を行い,以下の結果を得た。 1.試料作製法の確立:(1)染色体spreadの作製,(2)蛍光顕微鏡による染色体spreadのスクリーニング,(3)SEM用の試料処理,の各方法を確立した。(1)では,培地,固定液,前固定や細胞壁分解酵素処理の必要の有無を検討し,SEMに供試可能な染色体spreadの作製法を確立した。(2)では,細胞質の被覆のない染色体spreadをPI染色でスクリーニングするとともに,AT-richヘテロクロマチン領域をDAPI染色で可視化して写真撮影することによってSEM像との対比を可能にする方法を確立した。(3)では,試料の立体構造の保持を可能とするエタノール脱水-t-ブチルアルコール置換-凍結乾燥の処理方法を確立するとともに,SEMによる微細構造観察に適したオスミウムコーティングの処理条件を明らかにした。 2.SEM観察:汎用SEMを用いて観察した結果,従来の発芽管破裂法で作製した染色体spreadの大半は細胞質に被覆され,また例外なく立体構造を喪失しているのに対して,今回確立した方法による試料は細胞質の被覆がなく,立体構造を保持しており,SEM観察に適していることが明らかになった。しかし,汎用SEMでは染色体中のヘテロクロマチン領域の同定や染色体構造をクロマチン繊維レベルで解像することは困難であった。次に,電界放射型SEM(FE-SEM)での観察を試み,クロマチンレベルの観察が可能であることを確認した。現在,観察試料数を増やしてヘテロクロマチン領域について詳細な解析を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル材料として選んだC. orbiculareは多核性で,発芽管細胞内では核分裂がほぼ同調しているために,染色体spreadを作製すること自体は他の菌に比べて容易である。しかし,当初予想したよりも細胞質で被覆されている染色体spreadの比率が高く,SEM観察に適する裸出した染色体spreadを十分数得るのに時間と労力を要した。一方,立体構造を保持したSEM観察試料の作製やオスミウムコーティングの条件検討は比較的順調に進んだ。結果的に,平成30年度に予定したSEM観察手法の確立については達成できたが,FE-SEMによる観察は途中段階であるので,進捗状況としては「比較的順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
FE-SEMの観察を継続し,SEMによるヘテロクロマチンの構造解析は令和元年度中に完結させる予定であり,これは現在の進捗状況から推定して可能であると考える。また,FISHによる解析は令和元年の後半から開始し,令和2年度に集中的に取り組みたい。
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Causes of Carryover |
当初予算で計上していた学会出張費と人件費(合計45万円)に関しての支出がなかったこと,および消耗品に関して研究室にかなり在庫があり,その分に関しては購入する必要がなかったことが次年度使用額が生じた理由である。繰越した予算の令和元年中の使用に関しては,FISH関係の試薬類の購入,SEMの点検費用,学会出張以外の情報収集のための出張等に充てる予定である。
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