2020 Fiscal Year Research-status Report
Priming induced by symbiotic interaction between plant and microbes
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18K05656
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
仲下 英雄 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (70280724)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 久晴 福井県立大学, 生物資源学部, 准教授 (40281042)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 病害抵抗性 / プライミング |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の最終的な目的でもある「病害抵抗性と生育の間の拮抗・両立関係のメカニズムの解析」について、シロイヌナズナを用いたサリチル酸(SA)生合成系の活性化に着目した解析を進めた。SA生合成を活性化させる病原菌感染や抵抗性誘導剤処理および熱ショック処理は、SA生合成遺伝子とともにトコフェロール(ビタミンE;VE)生合成系遺伝子群の発現も誘導することを明らかにした。SAとVEはともにシキミ酸経路から原料が供給され、それらの代謝経路はコリスミ酸で分岐する。したがって、SA生合成が活性化される状況ではトコフェロール生合成が活性化され、実際にVEの蓄積も増加した。VEは非常に強い抗酸化活性を有していることから、SAシグナルによる活性酸素種生成を抑制し、SAによる生育抑制を制御している可能性が示唆された。プライミングを誘導する細菌エンドファ イトAzospirillum sp. B510を定着させた場合には、VE生合成系の活性化は起こらず、これはSA生合成が誘導されていないためであると考えられた。SA生合成欠損変異株sid2を用いた解析から、VE生合成はSAシグナルに依存しないことが明らかになった。これは、代謝経路の上流が共通しているSAおよびVEは、生育抑制につながるSA合成が活性化される状況では、常に同時に活性化されることによって生育抑制を制御して生育を維持する仕組みとなっていることを示唆する。 一方、病害抵抗性と生育を両立可能なプライミングのメカニズムの一つとして、植物ホルモンであるストリゴラクトン(SL)が関与している結果を得た。SLは菌根菌との共生関係の確立にも関与する植物ホルモンであるが、得られた結果から、共生微生物によるプライミングの誘導に関与する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トマトのプライミング関連候補遺伝子の過剰発現体の作出は遅れているが、菌根菌の共生によるプライミングの特性を解析し、プライミングが、サリチル酸シグナルのみではなくジャスモン酸シグナルに対しても効果があること、 また、非病原性細菌に対しても効果があることを明らかにしている。また、SA生合成とトコフェロール生合成が同時に起こるが、これは細菌エンドファイトにより誘導されるプライミングでは起こらないことを示し、トコフェロールがSAシグナルによる生育抑制を制御する可能性を示唆した。さらに、このようなプライミングの調節に働く植物ホルモンの一つとしてストリゴラクトンの関与を明らかにし、本課題の目的の達成に向けた種々の成果をあげている。
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Strategy for Future Research Activity |
病害抵抗性と生育の相互拮抗関係に関して、シロイヌナズナのトコフェロール生合成変異体を用いて、SA生合成を活性化させる防御応答とプライミングを比較して解析を進め、生育抑制の軽減におけるトコフェロールの意義を明らかにする。また、プライミングの誘導とその抵抗性発揮機構について、SA、JA、SL以外の植物ホルモンの関与について解析することにより、プライミングの分子機構の解明を進める。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍が研究推進に影響を及ぼしたため、次年度使用額が生じた。これは、2021年度に遺伝子解析の試薬および論文発表に使用する。
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Research Products
(3 results)