2019 Fiscal Year Research-status Report
難防除植物RNAウイルスの伝搬機構の解明と感染系の確立
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18K05661
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Research Institution | Iwate Biotechnology Research Center |
Principal Investigator |
藤崎 恒喜 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 園芸資源研究部, 主任研究員 (30626510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 元樹 公益財団法人岩手生物工学研究センター, ゲノム育種研究部, 主任研究員 (90734343)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ウイルス伝搬 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、RT-PCRによりGKaVが土壌細菌から検出された結果を受け、こぶ症リンドウ発症圃場の土壌および越冬芽から細菌相の調査を行なった。メタゲノム解析の結果、こぶ症株で存在比が上がっている候補菌株としてPseudomonas属菌やBurkholderia属菌等が同定された。越冬芽および周辺土壌からPDA培地上で単離された細菌種と一致する。単離された細菌のうちいくつかの菌株でRT-PCRによりGKaVが検出されたため、細菌を介したウイルス伝搬の可能性を検討するため、培養リンドウ組織への当該細菌の接触実験を行っているが、こぶ症発症とGKaV感染を再現するには至っていない。また、リンドウ苗にそれら細菌を接触させ、越冬後のこぶ症発症についても評価したが、これについてもGKaV感染が観察されていない。昨年度行ったGKaV検出細菌の単離実験では、新たにLuteibacter属菌なども単離されたため、これらについては今後調査予定である。 並行して、GKaVの弱毒、強毒株の同定を見据えて、野外圃場からのこぶ症耐性リンドウ候補株の収集と解析を行うとともに、リンドウの原因不明症状におけるGKaVをはじめとするウイルス調査、他のウイルス感染がこぶ症発症程度に及ぼす影響評価も開始した。その過程では低温依存的にリンドウで発病する新規トンブスウイルスを同定するなどしている。また、こぶ症リンドウの培養組織から実験室レベルでこぶ症緩和株の選抜を行った。単離した候補株(AS24)では地上部の生育阻害は緩和されているが、根の発達阻害とこぶ形成は複数回に及ぶ継代後も変わらず観察された。GKaVゲノムを調べたところ、とくに3’末端領域への変異の蓄積が認められた。昨年度はさらにこぶ症リンドウの培養組織に3回以上の変異導入剤処理/継代を行った。本年度はその効果の検証を進め、弱毒株単離の効率化にも取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画に従い、こぶ症発症株の越冬芽ならびにその周辺土壌の生物相の解析を行った。Pseudomonas属菌、Burkholderia属菌を中心にこぶ症株での存在比が増大する再現的結果を得た。そのうちいくつかの菌株ではGKaVが検出された。当該細菌を培養リンドウに接触させる感染実験を試みたが、こぶ症の発症とGKaV感染を確認するには至っていない。また、同様に鉢植えのリンドウ苗に接触させ、越冬後の形質調査も行ったが、これについてもGKaV感染が成立した株は認められなかった。以上のように現在のところ細菌を介したGKaV感染実験を成功させるには至っていない。 また、様々なGKaV弱毒・強毒候補株もしくはこぶ症耐性リンドウを同定することを目指し、野外リンドウ圃場からこぶ症緩和リンドウ、原因不明症状を示すリンドウなどの収集と調査を行った。原因不明症状を示すいくつかのリンドウ株からはGKaVは検出されなかったが、低温(18℃)依存的にリンドウで増殖・発病するユニークな特性を持った新規のトンブスウイルスが同定された。こぶ症緩和リンドウは以前のものと合わせて計20株収集し、昨年度越冬後の経過を観察した。いくつかでは欠株もしくはこぶ症の発症が確認されたため、残りの株について引き続き経過観察を進めている。 加えて実験室内でこぶ症の培養リンドウ株を継代維持している過程で生じる生育阻害緩和株に着目し、こぶ症緩和リンドウ組織(AS24)を選抜した。AS24は地上部の症状は緩和しているが、健全株と比べ特に地下部の生育阻害が顕著で、一部はカルス状のこぶ症状も観察されるなど、完全に無症状のGKaV感染リンドウ組織を選抜するには至っていない。そこで、昨年度は並行して選抜を促進するための変異導入剤(リバビリン)を処理し、継代を行った。現在までに少なくとも3回以上の処理と継代を繰り返している。
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Strategy for Future Research Activity |
こぶ症リンドウの越冬芽および周辺土壌からPDA培地上で単離された土壌細菌のうち、RT-PCRでGKaVシグナルが認められたものについて、Luteibacter属菌など昨年度新たに単離されたものについてのリンドウ株への感染実験とGKaV感染確認試験を引き続き行う。 こぶ症罹病株および発症圃場の土壌における生物相の解析については、一定の結果が得られたため、本年度はサンプル数を増やし、各サンプル間での特異性、共通性に関するデータの取得を目指す。 野外圃場でのウイルス調査、こぶ症緩和リンドウの収集を行うとともに、リバビリンによる変異導入をした培養リンドウからのこぶ症緩和リンドウ株の実験室内での選抜を引き続き行う。 これまで、罹病株破砕液および細菌を用いた接種試験で、人為的なGKaV感染およびこぶ症の発症に成功していないため、温度などの条件検討を視野に入れて研究を進めるとともに、接木によるGKaVの病原性評価の可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
野外圃場・温室作業要員として短期間採用予定だった技術職員を雇用できなかったため。今年度は当該技術職員を通年的に採用する予定である。
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