2019 Fiscal Year Research-status Report
内部寄生蜂が宿主ショウジョウバエ幼虫に誘導する組織特異的細胞死シグナル経路の解析
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18K05670
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
島田 裕子 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 助教 (30722699)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 内部寄生蜂 / ニホンアソバラコマユバチ / Drosophila melanogaster / 寄生 / 細胞死 / 宿主 / キイロショウジョウバエ / Asobara japonica |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、内部寄生蜂 Asobara japonica が宿主キイロショウジョウバエ Drosophila melanogaster の幼虫に寄生する際に、宿主幼虫の体内にある将来成虫 となる組織(成虫原基)において細胞死を誘導する物質 "Adidas" を同定することを目指している。 2019年度においては、寄生蜂150匹分の抽出液を用いて、陰イオン交換クロマトグラフィーにかけて、50 mM HEPES buffer pH9の条件で、Adidas を陰イオン交換カラムに吸着させることに成功した。クロマトグラフィーにかける前に、試料を50度5分処理することによって、夾雑物を相当量減らすことに成功した。現在、分画物をSDS-PAGEにかけて、バンドの絞り込みを行っている。 また、寄生蜂が産生する細胞死誘導物質を同定する目的で、先進ゲノム解析研究推進プラットフォームの支援を受けて、次世代シーケンサーによるゲノム解析と遺伝子同定のためのプラットフォームの構築を行った。PacBio と Illumina paired-end による全ゲノム配列解読、新規ゲノムアセンブリー、遺伝子推定の結果、推定ゲノムサイズ 330 Mbp、ヘテロ接合度 0.132%、Scaffold 数601、N50 = 2.64 Mbp のゲノムデータを構築できた。一方、予測遺伝子数は12,508 で、ハチ目昆虫の universal single copy gene 4,415個のうちの 95.2% をカバーする完成度である。これらの値は、同科近縁種でのゲノム解析結果を圧倒的に上回るものであり、非常に高品質なゲノムデータの構築に成功した。現在、RNAseq解析により、毒腺で高発現する遺伝子の同定を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、蜂の寄生に拠らない生物検定の確立と陰イオン交換クロマトグラフィーの実験系の確立は大きな進展である。また、ゲノムデータの解析やRNAseq 解析では、大変品質の良いプラットフォームを構築することができた。2年間の準備期間を経て、3年目は、毒成分 Adidas の同定に全力を尽くしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、また、分画できた抽出液をSDS-PAGEで展開し、銀染色を行うことで、活性成分のタンパク質の大きさを見積もる予定である。 一方、別のアプローチとして、ハチの毒腺とそれ以外の組織からそれぞれ抽出したRNA を用いたRNAseq解析により、毒腺で高発現する遺伝子群をリストアップした。そこで、その遺伝子をRNAi法によって、寄生蜂の幼虫でノックダウンすることにより、それぞれの遺伝子の機能解析を行う。RNAi 個体を用いて感染実験を行い、寄生成功率が低下する場合、あるいは成虫原基でのアポトーシスが減少する場合に着目する。
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Research Products
(1 results)