2018 Fiscal Year Research-status Report
昆虫嗅覚系の補助タンパク質を活用した受容体利用型匂いセンサの高感度化技術の確立
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18K05671
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| Research Institution | The University of Tokyo |
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Principal Investigator |
光野 秀文 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (60511855)
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| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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| Keywords | 匂いバイオセンサ / 昆虫 / 嗅覚受容体 / 補助タンパク質 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
昆虫の嗅覚受容体を発現させたSf21細胞（センサ細胞）は、匂い物質（対象臭）を検出する匂い検出素子として利用することができる。しかし、現在のセンサ細胞は昆虫が本来もつ匂いの検出感度には至っていない。本研究では、昆虫の嗅覚系で機能する補助タンパク質等の機能検証を通して、高感度化に寄与する生体分子を探索して活用することにより、実サンプルの検出に利用できる検出素子の作出を目指した。
これまでに、昆虫の嗅覚受容体、共受容体Orco、およびカルシウム感受性蛍光タンパク質（GCaMP6s）の3種類の遺伝子を安定に機能発現し、ほぼすべての細胞で蛍光応答が取得できるSf21細胞系統を樹立してきた。平成30年度では、本細胞系統へ新しく遺伝子導入することにより、生体分子の機能評価系の構築を試みた。まず、生体分子として異なる嗅覚受容体を用いて、本細胞系統に遺伝子導入し対象臭に対する蛍光応答を取得した結果、導入した嗅覚受容体の応答特性に従って匂い物質に対する蛍光応答が取得できることを示した。これにより、本細胞系統へ新しい遺伝子を追加導入することにより、生体分子の機能が評価できることを明らかにした。次に、高感度化に寄与する生体分子として、カイコガおよびキイロショウジョウバエのゲノムデータベースをもとに、Sensory neuron membrane protein（SNMP）を含む、複数種類の遺伝子を単離した。匂い応答に対するSNMPの効果の予備実験として、アフリカツメガエル卵母細胞に、嗅覚受容体とOrcoに加えてSNMPを共導入し、対象臭に対する電流応答を取得した結果、SNMPを共導入した卵母細胞において対象臭に対する電流応答値が増加する傾向が確認された。現在、Sf21細胞系統における発現ベクターを構築し、対象臭に対する蛍光応答値を比較することにより、SNMPの高感度化への効果の検証を進めている。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度では、昆虫の嗅覚受容体、Orco、およびGCaMP6sを安定に発現するSf21細胞系統を活用して、生体分子として新たに導入した嗅覚受容体の機能評価が可能であることを示した。現時点では、生体分子として嗅覚受容体を対象としたが、昆虫の嗅覚系で機能する生体分子の遺伝子を細胞系統へ新たに導入することで機能発現が可能であり、その応答を取得して評価できることを実証した。これにより、本細胞系統による生体分子の機能評価系の確立を達成した。また、予備実験ではあるが、昆虫の嗅覚系で高感度化に寄与すると考えられるSNMPをアフリカツメガエル卵母細胞で嗅覚受容体やOrcoとともに機能発現させることにより、匂い物質に対する応答値が上昇する傾向を見出した。この結果は、嗅覚受容体とOrcoを機能発現する細胞へ生体分子の機能を付与することにより、感度向上の可能性を示唆する結果であり、高感度な検出素子の構築のために、きわめて重要な成果である。現在、確立した細胞系統による生体分子の機能評価系に導入する発現ベクターも構築し、遺伝子導入を進めている。
以上のように、現在までに嗅覚系で機能する生体分子の機能評価系を構築し、すでに生体分子により匂い応答の高感度化の可能性を示唆する成果が得られていることから、「おおむね順調に進展している」ものと判断した。
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| Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、平成30年度に確立したSf21細胞系統による生体分子の機能評価系を活用して、昆虫の嗅覚系で機能する既知の補助タンパク質の高感度化に与える効果を検証する。具体的には、まず予備実験で高感度化への寄与が示唆されたSNMPをSf21細胞系統に遺伝子導入して、さまざまな匂い物質に対する選択性、濃度応答性を取得し、未導入の細胞系統と比較することで、SNMPの高感度化への効果を検証する。同様に、昆虫の嗅覚系で機能するGタンパク質等を細胞系統へ遺伝子導入し、選択性、濃度応答性を取得・比較することで、これらの生体分子の効果を検証する。以上を通して、既知の補助タンパク質を対象に、高感度化に寄与する生体分子を選抜する。並行して、キイロショウジョウバエのゲノム情報解析やRNAシーケンシングを実施し、昆虫の触角で機能する生体分子の遺伝子を選抜する。そして、対象となる生体分子の遺伝子を細胞系統へ導入し、同様に、選択性、濃度応答性を取得・比較することにより、高感度化に寄与する生体因子の探索を進める。
高感度化への効果が確認された生体分子については、高感度な匂い検出素子の作出に向けて、“人工嗅覚細胞”の作出を進める。具体的には、昆虫の嗅覚受容体、Orco、GCaMP6sとともに、対象となる生体分子を遺伝子導入し、単一細胞に由来する細胞系統を樹立することで、それぞれの遺伝子を安定に発現する細胞系統を作出する。そして、対象臭の検出性能を評価することで、“人工嗅覚細胞”の構築の可能性を検証する。
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| Causes of Carryover |
本研究では、昆虫の嗅覚系で機能するさまざまな生体分子の遺伝子を単離するために、キイロショウジョウバエのゲノム情報解析やRNAシーケンシングの実施を計画している。平成30年度では、昆虫の嗅覚系で機能する生体分子のうち、まずはゲノム情報をもとに、遺伝子配列が明らかな複数種類の生体分子を対象に機能評価を実施したため、当初予定していたRNAシーケンシングによる新たな生体分子の遺伝子の単離は現在までに実施していない。そのため、RNAシーケンシングやそれに伴う実験の費用に関して、“次年度使用額”が生じた。
令和元年度では、昆虫の触角を対象としたRNAシーケンシングを実施し、その情報をもとに生体分子の遺伝子の単離を予定している。前年度の未使用額については、これらの実験を実施するために使用する予定である。
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Research Products
(3 results)
