2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K05676
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
吉賀 豊司 佐賀大学, 農学部, 准教授 (00312231)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自然免疫 / 昆虫 / 線虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
C. elegansを昆虫体内に注入すると血球数が減少する現象について、これが線虫による血球捕食に起因することを検証した。in vitro実験で、C. elegansは血球を丸呑みしていく様子が観察され、実際に血球数が有意に減少することを明らかにした。また、その際に、線虫はプラズマ細胞や顆粒細胞などの血球の種類の選択は見られず、口の近くにあるものを飲み込んでいくことが観察された。C. elegansの滲出液を集めて昆虫に注入しても血球数には変化が見られなかったため、摂食が大きな要因である可能性が高まった。C. elegans摂食変異体を用いて実験を行なった結果、摂食に異常がある変異体では野生型に比べて血球数が現象しないことがin vitroおよびin vivo実験で明らかとなった。また、野生型を注入した際にも、造血器官や造血器官での血球生産能力には影響がないことが明らかとなった。さらに、線虫注入による血球数の現象は、C. elegans以外の細菌食性線虫においても観察された。このことから、血球の捕食は、細菌食性線虫で保存され、細菌食性線虫が昆虫病原性や昆虫寄生性へ進化する際に重要な性質であることが示唆された。 既存の、体表面構造に変異が生じているC. elegans変異体を用いて、包囲を受ける変異体のスクリーニングを行なったが、今のところ試したすべての変異体は野生型と同様に包囲を受けなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
線虫による昆虫の血球数減少は、線虫による摂食がその原因であることを証明することができたため。また、その結果は論文としてまとめ、国際誌へ投稿中である。 線虫体表面に存在する、昆虫血球のspreadingを抑制する因子について、様々な方法を用いて同定を進めており、それが複合脂質である可能性が高いことが分かったが、いるがまだ同定には至っていない。 包囲を受けるC. elegans変異体の解析について、体表面構造に変異が生じているC. elegans変異体を用いてスクリーニングを行なったが、今のところ試したすべての変異体は野生型と同様に包囲を受けなかった。 以上の通り、当初予定していた3つの課題に計画通り取り組んでおり、一部は論文として投稿にいたっている。
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Strategy for Future Research Activity |
線虫体表面に存在する、昆虫血球のspreading抑制因子については、異なる方法を試しながら継続して物質同定を目指す。 包囲を受ける線虫の変異体については、変異源(EMS)を用いて変異体を作成し、それからスクリーニングを行なっていく。変異体の作出方法は確立されているため問題ないが、効率よく変異体をスクリーニングする方法についてまだないため、まずは方法を検討し、変異体のスクリーニングを進めていく。 血球を捕食する現象については、細菌食性線虫において保存されていることが分かったので、さらに昆虫に対する病原性をもつ線虫種と持たない線虫種が存在するOscheius属において病原性との関係について検討していく。
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Causes of Carryover |
当初は国内の学会に2名で参加する予定であったが、大学の卒業式と重なったために参加できなかった。また、興味深い結果が得られたためその研究成果を発表するために2019年に国際無脊椎動物学会へ2名で参加することとし、その分の予算も確保するために差額が生じた。
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