2018 Fiscal Year Research-status Report
A study of the evolution of the tritrophic interaction between a parasitoid wasp, its host beetle and their common predatory ants
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18K05679
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
西村 知良 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (30548417)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 共進化 / 3者系 / アリガタバチ / カツオブシムシ / アリ / 行動生態学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はアリを共通の捕食者とした寄主と寄生蜂の3者系の共進化を解明することである。具体的には、仮説「キアシアリガタバチ(以下ハチ)が寄主ヒメマルカツオブシムシ幼虫(以下カツオブシムシ)に寄生する理由はハチ自身がアリへの防御として寄主カツオブシムシの長毛を利用するため」を検証する。この検証に以下に示す4分野の研究手法、つまり「行動を起こすしくみ:化学生態学」・「寄生行動の適応価の解明:行動生態学」・「ハチ個体が寄生する経緯:生活史戦略」・「ハチ個体群の系統関係:生物地理」を用いる。本年度の計画実施の成果は以下である。 「行動を起こすしくみ」において、誘引物質特定のための行動実験に利用する動画による観察方法を確立した。同時に画像解析ソフトによるハチの行動の自動追跡方法も確立した。自動追跡は誘引物質特定の行動実験の高精度で簡便な遂行に役立つ。またこれによる定量的な行動解析は「行動の適応価の解明」にも有効である。 「行動の適応価の解明」では、寄主カツオブシムシの長毛(槍状毛)の機能を行動実験で調べた。クロヤマアリ(以下アリ)とカツオブシムシ幼虫を容器内で自由に歩行させると、カツオブシムシに接触したアリは歩行に異常を示し行動不能になった。一方、死んだカツオブシムシへの接触はアリに行動不能をもたらさなかった。ハチで同様の実験を行うと、ハチの活動に異常は生じなかった。走査型電子顕微鏡でアリとハチの体表を調べると、カツオブシムシの長毛がアリの脚や触角に束で絡みついていたが、ハチにはなかった。また、アリに有害性を示すカツオブシムシの長毛に花弁状の構造があった。これが有害性の原因である可能性がある。 「ハチ個体が寄生する経緯」の生活史戦略の解明のため、現在、実験室の一定温度・光周条件にて飼育中である。 「ハチ個体群の系統関係」の解明のためにミトコンドリアDNAのCO1領域の塩基配列を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「行動を起こすしくみ」の解明については、誘引物質特定のための行動実験を高精度で効率的かつ定量的に行うため、デジタル技術の応用を試みた。その結果、実験手法は確立したものの、その確立に時間がかかったため、カツオブシムシからの誘引物質の抽出やそれを用いた行動実験に至らなかった。 「行動の適応価の解明」については、ハチの行動の適応価を直接見る前に、カツオブシムシの長毛(槍状毛)の機能(有害性)の詳細を明らかにする必要があった。それによって、カツオブシムシの長毛に対するハチとアリの反応や効果の違いが解明され、極めて有意義な成果を得たが、一方で、ハチの寄生行動を直接調べる実験が後回しになった。また、槍状毛の構造を調べた結果、花弁状の構造が明らかになった。この構造が、有害性にどんな役割や効果をもっているのか調べる必要が出てきた。 「ハチ個体が寄生する経緯」の生活史戦略の解明のため、現在様々な条件でハチを飼育中であるが、このハチの繭における休眠期間が8~10カ月と非常に長いことから、データ解析にまで至っていない。 「ハチ個体群の系統関係」の解明のためのDNA解析を行った際に、これまでDNA解析実験を行っていなかったため、本年は実験室のDNA解析実験の設備の確立に時間がかかった。今後は、他の遺伝子の配列や、他の地域個体群の遺伝子配列をスムーズに調べることができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の主な課題は、研究遂行に必要な各地の地域個体群の採集、および各地域個体群の個体を用いた実験である。そのため、誘引物質の特定を行う必要がある。しかし、物質の特定に時間がかかる場合や、ハチが出現する季節に間に合わない場合も考えられる。そのため誘引物質を用いない方法で地域個体群を採集することも検討する必要がある。 「行動を起こすしくみ」の解明の課題においては、誘引物質の特定とそれを用いた地域個体群の採集を行う。「行動の適応価の解明」の課題においては、ハチの寄生行動を定量的に調べ、適応価を調べる。「ハチ個体が寄生する経緯」の課題においては、実験室における様々な条件のハチの飼育記録から、休眠や臨界日長などの生活史にかかわる性質を解明する。 「ハチ個体群の系統関係」の課題においては、ハチのCO1以外のいくつかの遺伝子(16SrRNA領域、ND5領域など)の塩基配列を明らかにする。 現在保有している系統以外の地域個体の系統を採集できれば、上記の課題における地理的変異や、系統関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
設備備品として申請していた自動追跡画像解析システム(ライブラリー,GIN60-2D)が高額で、購入すると他の実験遂行に支障が出ることから購入できなかった。そのため、このシステムの構成物品のうち、代替不可能な自動追跡認識ソフトウェア(2次元動画計測ソフトウェアMove-tr/2D)のみの購入を行った。代替が可能なカメラ部分やデジタル部品などについては、本来予定していたカメラの性能とは少し異なるが、比較的廉価な別のカメラ等のデジタル部品をいくつか試みた。このことによって、若干の差額が生じ、次年度使用額が生じた。その代替措置において、現段階においては、ある程度解析できる程度に昆虫の行動を観察し記録できることを確認した。しかし、まだ改善の余地はあるため、今後いくつかのWEBカメラや部品を試すことにより、さらに円滑で精度の高い観察記録や実験が行えるよう調整を検討中である。そのため、引き続き、デジタル部品等が必要であることが考えられるため、次年度使用額をその購入に充てることを予定している。
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Research Products
(2 results)