2018 Fiscal Year Research-status Report
Clarification of the complex host plant utilization of Asphondylia species (Diptera: Cecidomyiidae) and verification of the relationship between Asphondylia and its symbiont fungi
Project/Area Number |
18K05682
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
上地 奈美 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 上級研究員 (40507597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 厚子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 上級研究員 (10450313)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | タマバエ / ブドウ / 共生菌 / 新規発生 / バーコーディング領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
タマバエ類は寄主植物の範囲が狭く、同一植物科に限られることが多い。しかし、例外的に複数科の植物に寄生する例が知られている。近年、福島県や宮城県で発生が認められるブドウミタマバエもその一種である。これには、共生糸状菌の関与が示唆されている。そこで、被害状況を明らかにするとともに共生菌の関与を検証し、害虫種の防除に活用できる基礎データを得ることを目的としている。
H30年度は、6月に栃木県でブドウ果実を加害するタマバエが新たに発生したため、その同定を試みた。まず、栃木県日光市で採集されたタマバエのうち、雌雄成虫および蛹を検鏡し、形態的な特徴を確認した。成虫の触角や産卵管の形状や、蛹の頭部の突起の有無などが、ハリオタマバエ属の特徴と一致した。 そして、ミトコンドリアDNAのCOI領域のうち、バーコーディング領域の一部の配列を決定し、福島県や宮城県で得られたブドウミタマバエ、そして、日本産のハリオタマバエ属の複数種の配列と比較した。栃木県の個体と、福島県のブドウミタマバエの配列の差異は0~3塩基(0~0.49%)であり、種内変異の範囲であると考えられた。これらの結果から、栃木県で新たに発生したタマバエを、ブドウミタマバエであると判断した。この結果を受け、8月17日に栃木県からは特殊報第1号が発表された。なお、これまで発生している福島県では、ほとんど被害果実が認められず、発生が少なかったと考えられる。
共生糸状菌に関しては、ブドウミタマバエ、キヅタツボミタマバエのゴールを採取して分離培養を試みたものの、残念ながら成功しなかった。ゴール内の幼虫が若齢であるなどの理由によりうまくいかなかったことが考えられる。次年度、異なる時期に採取して、分離培養を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ブドウミタマバエの被害状況に関しては新たな発生地(栃木県)を把握した一方で、既に発生している園地(福島県)での被害がほとんどなく、生態情報の収集や追加のサンプリングができなかった。共生糸状菌に関しては、ブドウミタマバエ、キヅタツボミタマバエのゴールを採取して分離培養を試みたものの、残念ながら成功しなかった。ゴール内の幼虫が若齢であるなどの理由によりうまくいかなかったことが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は、主な対象としているタマバエ種の発生が少なく調査が難しかったことを顧みて、H31年度は、定期的な調査やサンプリングが可能な(害虫でない)ハリオタマバエ属の発生地の探索をすすめる。 共生糸状菌に関しても培養や、タマバエ種ごとのシークエンスを行い、データベースに登録されている外国の種との比較等を行い、研究を進める必要がある。これらを実施するため、種々のゴールを異なる時期に採取して、分離培養を試みる。ゴールからの共生菌の単離に加え、ゴール分解調査の際にエタノール中に保存したゴールや虫体の標本からのシークエンスも試みる。
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Causes of Carryover |
昨年度は、主な研究対象としているタマバエ種の発生が少なく、現地調査やサンプリングが十分に実施できなかった。今年度は近隣での採集・調査の頻度を上げて、共生糸状菌に関する成果を目指し、遺伝子解析等も実施する予定である。
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