2020 Fiscal Year Research-status Report
Clarification of the complex host plant utilization of Asphondylia species (Diptera: Cecidomyiidae) and verification of the relationship between Asphondylia and its symbiont fungi
Project/Area Number |
18K05682
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
上地 奈美 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 上級研究員 (40507597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 厚子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 上級研究員 (10450313)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ブドウミタマバエ / grape berry gall midge / ハリオタマバエ属 / Asphondylia / Botryosphaeria |
Outline of Annual Research Achievements |
1.ブドウミタマバエの分布情報:青森県の栽培ブドウで採取された被害果房から羽化した成虫と蛹殻の形態観察をおこなった。また、成虫からDNA抽出して塩基配列を決定し、同属種と比較した。材料および方法:1)形態観察:75%エタノール液に保存されている雌成虫と蛹殻を実体顕微鏡下で観察した。2)遺伝子解析:ゲノムDNAを抽出し、PCRで増幅した後にシークエンスを実施し、塩基配列を決定した。得られた配列情報と、日本産ハリオタマバエ属10種、および、福島県や宮城県、栃木県から採集されたブドウミタマバエの塩基配列を比較した。 結果および考察:1)青森県のブドウ果実より採集された雌成虫の触角と翅、生殖器などの形態的特徴、および蛹の頭部および胸部の形態的特徴はハリオタマバエ属タマバエ類の特徴と一致した。2)青森県の栽培ブドウから得られたタマバエの塩基配列は、これまで得られているブドウミタマバエの配列とほぼ一致した。そこで、青森県のブドウ果実に寄生していたタマバエは、ブドウミタマバエであると結論付けた。 これらの結果から、ブドウミタマバエは、これまで発生が確認されている栃木、福島、宮城に加え、青森県にも分布しており、関東以北に広く分布している可能性が考えられた。
2.共生菌の解析:同属種であるアオキミタマバエのゴールから共生菌が6株分離され、Botryosphaeria属菌の分類学的再検討に供された。形態的特徴からBotryosphaeria属菌と同定されている様々な植物を宿主とする株や、果樹の病害から病原菌として得られた6株とともに解析され、分子系統解析による分類学的位置付けの再検討がなされた。rDNA ITS等の部分塩基配列からなる多遺伝子座領域が解析された。 その結果、アオキミタマバエのゴールから分離された6株は,既知種とは異なる新規クレードを形成し、新種である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していた生活史や越冬植物の解明や、寄主植物の利用様式の解明には至っておらず、計画通りあるいは計画以上の進捗とは言い難い。これには、栽培ブドウ園地における発生が少なく採集ができなかったり、共生菌の分離・培養が想定よりも難航したことが理由として挙げられる。 一方、ブドウミタマバエの分布状況が複数県にまたがることや、多くの栽培ブドウ品種がタマバエによって寄生されることが明らかになった。また、共生菌についても同属タマバエ種からの菌株の分離が成功し、分類学的再検討がなされ、果樹の病害の種を含む既知種とは異なる新種である可能性が示された。研究対象となるタマバエ種および共生菌に関する多くの情報が得られ、研究としては大きな成果が得られたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得ているタマバエの標本からDNA抽出をしてシークエンスを実施し、タマバエ類の塩基配列情報をできる限り蓄積する。
ブドウミタマバエに関する知見をとりまとめ、論文として投稿する。
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Causes of Carryover |
年度初めに感染症拡大防止のため、長期間にわたり自宅待機になったため、継続した試験研究ができなかった。また、実課題担当者が年度途中で異動・併任になり、十分な研究時間が取れなかった。 今年度は、タマバエのシークエンスの実施と、ブドウミタマバエに関する知見をとりまとめ投稿する際の論文投稿費用等に助成金を使用する予定である。
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