2019 Fiscal Year Research-status Report
Genetic analysis of dugong skeletal remains excavated from archeological sites in Okinawa.
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18K05685
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
角田 恒雄 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (80446575)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 古代DNA / 生物多様性保全 / 海生哺乳類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は沖縄各所に点在する遺跡から発掘されるジュゴン骨を対象とし、古代DNAの抽出ならびに次世代シークエンサを用いた分析を行い遺跡時代から近代における遺伝的多様性の推定を目的とする。本年度は昨年、実験対象として沖縄県東岸の平敷屋トウバル遺跡から出土した骨を対象に、次世代シーケンサー(NGS)による分析を行った。NGS分析に際し、研究協力者のもとに出向し、実験・分析手順を習得した。実験では各試料のライブラリの作成し、インサートされているDNA配列の長さと濃度をそれぞれ計測・記録し、実験を進めた。1st PCR後の諸情報の計測後、目的とする配列のみを選択的に実験に用いるためサイズセレクションを行い、NGSを用いたショットガン・シークエンスを進めた。試料は昨年DNA抽出を行った耳包骨1点、肩甲骨1点、肋骨片8点、計10点の骨試料を対象に実験を行なった。結果として、昨年度実施した実験では9試料から50bp-90bp程度の増幅は見られたが、本年度は10試料のうち3試料で、対象とするミトコンドリア由来の配列が得られたが、それぞれ1から数リードとごくわずかであり詳細な分析を進めることができなかった。この原因としては、対象由来のDNA回収量が予想よりも少なく、ショットガンシークエンスでは分析が難しかった可能性がもっとも高いと考えられる。古代DNAを抽出した際には多くの場合、バクテリア由来のDNAが99%を閉めることが指摘されており(Green et al. 2010)、得られたリードの割合から今回の実験も当てはまると予想される。現在、対象とするDNAを濃縮するために、ミトコンドリアDNAのキャプチャ処理を行っており、この処理によってNGSによる上位の分析が可能になってくると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度の実験で対象動物のDNA抽出に成功し、先の実験であるNGS分析に取り掛かる予定であったが、NGSシークエンスを実際に行ったところ、直接分析を進めるだけのDNA量がまかなえていないことが判明した。対象DNAを増幅するために状態の良い鋳型となるDNAがある程度多量(筋肉組織など)に必要となるが、対象のジュゴンは我が国では絶滅危惧種で試料提供を頂くために、かなりの時間を要してしまった。現在は貴重な試料を十分量提供いただいたため、分析の遅れを取り戻すため目下鋭意実験を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
NGS分析を進める上で必須のファクターが揃い、実験・分析手法に関しても研究協力者からそのノウハウ等を習得したため、出来うる限り実験と分析を鋭意進める。本年は新型コロナウイルスの影響による最たる問題は試料のサンプリングであり、試料提供頂く機関への出向が難しい場合には、現地の研究協力者と相談し、試料を送付頂くことを主視野に入れ、本研究を進めてゆく。
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Causes of Carryover |
本研究の中心的分析がNGSを用いたものであるが、上記事情により実験を進めるためのキャプチャ処理が遅れたことにより、NGS実験消耗品費用が次年度使用分となった。また、この春先にサンプリングに向かう予定であったが、新型コロナウイルスの影響で出向を自粛したことによる出張費が次年度分となった。今年度、サンプリングのための出向意思はあるが、現在の情勢が変化せず出向が困難な場合には、文化財である試料の送料と、高額なNGS実験消耗品費用に当てる予定である。
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