2018 Fiscal Year Research-status Report
イバラトミヨ雄物型局所個体群の遺伝的構造に着目した潜在的絶滅要因の解明
Project/Area Number |
18K05686
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
高田 啓介 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (90197096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 洋 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 准教授 (90399650)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イバラトミヨ雄物型 / 絶滅確率 / 集団遺伝学的解析 / 再放流 |
Outline of Annual Research Achievements |
イバラトミヨ雄物型がどのような要因によって絶滅する可能性があるのかを解明するため、本年度は絶滅確率が相対的に低いと予想される秋田県雄物川水系と高い山形県最上川水系の湧水群で、できるだけ多くの個体群の生息状況を確認し、解析に適した個体群の選定を行った。 年度当初から8月にかけて秋田、山形の両県の保全担当部署と綿密な連絡と指示を仰ぎつつ、調査地点全てについての調査目的や採捕方法、個体数等の概要書を作成し提出した。また、両県ではイバラトミヨ雄物型が天然記念物に指定されている地点も多く、それらの地点では天然記念物現状変更申請を行い、変更許可証を事前に取得した。さらに、調査地点を管轄する両県の水産課から、採集魚種、および、採集のために用いる漁具申請を行い、それらの地点での特別採捕許可証を事前に取得した。 調査に必要な全ての手続きを終えた10月中旬に秋田県雄物川水系の6地点、山形県最上川水系の3地点でイバラトミヨ雄物型の採集を行った。秋田県雄物川水系の2地点では過去にイバラトミヨ雄物型の採集記録があるにもかかわらず、1個体も採集できなかった。残りの4地点では、集団遺伝学的解析に十分な個体数が採集されたのは2地点のみで、予定した3地点には届かなかった。山形県最上川水系の3地点では、いずれの地点でもイバラトミヨ雄物型をある程度の個体数採集できたものの、正確な集団解析に十分な個体数には至らなかった。秋田、山形のいずれの地点での採集個体は、解析に必要な鰭の一部を採取したのち、生きたまま採集した場所へ再放流した。 採取した鰭は実験室に持ち帰り、年度末までに全ての個体からTotal DNAの抽出を完了するとともに、一部のDNA試料を用いてmtDNA解析を開始した。また、予定していたマイクロサテライト解析プライマーを用いて、解析条件の検討に入ることもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
秋田、山形の両県において、3地点ずつの調査個体群をほぼ計画通り、選定することができた。しかし、秋田県では明らかにイバラトミヨ雄物型が多数生息していると思われる生息地があったが、採集の許可を得ていなかったために調査を断念した。次年度に手続きを踏んで調査採集を行う予定である。現地調査の過程で、イバラトミヨ雄物型の生息状況に詳しい方々に出会うことができ、これまで文献調査では得られなかった生息情報を得ることができた。 採取した全ての個体の鰭からは、遺伝的解析に十分なTotal DNAを抽出することができた。さらに、集団解析にも用いることのできるmtDNAの解析も開始できている。
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Strategy for Future Research Activity |
集団遺伝学的解析には各水系で3個体群ずつを予定しているが、秋田県では1個体群が不足し、山形県では個体群数は満足しているものの、解析に用いる個体数がやや不足している。解析の精度を高めるため、R1年度も秋田県雄物川水系では解析に適した新たなイバラトミヨ雄物型の個体群の発見を、山形県最上川水系ではさらなる解析個体の追加のための調査採集を行なう。 R1年度はマイクロサテライトの解析を本格的に開始する。その際、最近幾つかの生物種で試み始められているMIG-seq解析等の高速シーケンサを用いた解析方法が本研究に有効かどうかの検討を行ないたい。 イバラトミヨ雄物型の生活史情報と環境情報の収集を遺伝的解析と並行して行なう。
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Causes of Carryover |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額はR1年度請求額と合わせて、消耗品費、および解析費用として使用する予定である。
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