2018 Fiscal Year Research-status Report
絶滅危惧種ベッコウトンボの生息地外導入先選定方法の提案と実践
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18K05689
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山下 奉海 九州大学, 持続可能な社会のための決断科学センター, 助教 (70704609)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ため池 / 分散 / 人工繁殖 / 希少種保全 / 官学民協働 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベッコウトンボは絶滅が危惧されるトンボである。近年、本種が安定的に発生している場所は、全国的にもごくわずかなため、保全のための措置が急務となる。本種の保全のためには、安定的な生息地においての生息域拡大が望ましい。しかし本種の移動能力は極めて弱く、現在の主要な生息地での生息地分散は確認されていないため、今後も自力での生息地分散は期待できない。したがって、本種の生息域拡大を図る際には、保護増殖をもとにした人為的生息地外導入が最も現実的な措置となると考えられる。 このような背景から、本研究では、ベッコウトンボの人為的生息地外導入を念頭に、導入先選定法の提案と実践を行う。導入先の選定法としては、本種が現在生息しているため池とその周辺のため池の環境条件を詳細に調査し、現在のベッコウトンボが棲んでいるため池と環境が近いため池を特定し、その池を導入適地として提示する。 実際に調査を行うのは、現在ベッコウトンボが生息する2か所のため池とその周囲の約40か所のため池である。既存研究では、ベッコウトンボの幼虫・成虫の生育に影響を与える要因として、ため池の水深、解放水面の存在、抽水植物の存在、休息地・採餌場となる周囲の草地の存在、外来種の脅威などが挙げられているため、それらに関わる地理的要因(ため池面積など計3要因)、環境要因(抽水植生の面積と比率など計9要因)、生物間相互作用(外来種の在・不在など計3要因)を調査対象とする。調査で得られた結果をもとに、各池を環境条件ごとに2次元マップに配置し、クラスター分析により似た環境のため池を類型する。類型の結果、現在ベッコウトンボが再生産する2つの池と環境の近いため池があれば、そこを導入先として適性が高いため池として提示する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度の平成30年度は、当初の予定通り、ため池調査許可取得とため池での環境調査、生物調査に労力を割いた。 研究対象である農業用ため池の調査を行うにあたっては、ため池の所有者、管理者、受益者から調査許可を取得する必要があるため、調査対象の42か所のため池全てにおいて、調査許可を取得した。ほとんどのため池では、関係自治体担当部署の協力のもと、書面で研究の説明を行い、調査の許可を得ることができたが、一部のため池では、所有者や管理者から直接的な調査の説明を求められた。その際には、実施者が地域に足を運び、丁寧に農業へ悪影響のない研究計画を説明し、調査の許可を得た。 調査許可を得た後には、ため池の環境調査と生物調査を行った。環境調査においては、水質、水深分布、水深変動の直接計測を行った。またUAVを用いて、全てのため池とその周辺地形の空中写真を撮影した。この空中写真は、今後GISを用いて解析を行い、ため池面積、周囲の草地面積、周囲の森林面積、開放水面・水中植生の面積と比率などを算出する。一方で、全てのため池で小型定置網(所謂もんどり)を用いて生物の採捕調査を行い、各ため池の生物相を記載した。 以上がこれまでの研究の進捗である。ため池の調査許可の取得に想定以上の時間を要したものの、その他はおおむね当初計画どおりに進んでいる。そのため、研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、当初の計画通り、現地調査の継続、環境条件の解析、中間結果の学会発表を実施する予定である。 環境調査では、昨年度と同様に水質、水深分布、水深変動の直接計測を行う。生物相調査では、昨年度実施したもんどり調査に加えて、釣りとたも網による調査も実施し、外来種分布も含む生物相の解明を進める。また、新たにヨツボシトンボ、シオカラトンボ幼虫のコドラート調査も実施する。 平成30年度に取得した環境データの解析も行う。UAVにより撮影した各池の空中写真をGISを用いて解析し、ため池面積、周囲の草地面積、周囲の森林面積、開放水面・水中植生の面積と比率などをそれぞれ算出する。 空中写真の解析結果が整えば、各池の環境条件の傾向が明らかとなる。その結果をもとに、現時点で明らかになったことを学会にて発表する。発表を行う学会は、生態学会、トンボ学会などを想定している。学会で得た知見や他研究者からの意見は、今後の研究へとフィードバックしていく。
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Causes of Carryover |
小型定置網を用いた生物調査が、当初想定してたよりも人員が必要とならなかったため、人員1名分の旅費を使用せず、次年度使用額が生じた。 次年度仕様となった助成金は、31年度に新たに計画した釣り調査に使用し、この研究の外来魚の調査精度を向上させる。
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Research Products
(1 results)