2018 Fiscal Year Research-status Report
体細胞初期化技術による遺伝資源の保全に対応したユニバーサル卵子の作出と評価研究
Project/Area Number |
18K05693
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
安齋 政幸 近畿大学, 先端技術総合研究所, 准教授 (30454630)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 体細胞核移植 / マウス / 異種間 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、マウス体細胞核移植技術の普及により、希少動物や絶滅危惧種の保全、絶滅動物の復活への横断的研究が可能となった。しかし、卵子を得ることが困難である動物種や高齢化による生殖細胞自体の回収が困難な動物個体においては、近縁種の卵子を使用した異種間核移植技術の確立と分子遺伝学的解析技術の確立が必須であり、さらなる研究を遂行する上で当該技術の効率化は極めて重要である。最近、申請者らの共同研究グループは、マウス体細胞核移植胚の発生率を劇的に改善し「産子発生の向上」ならびに「初期化抵抗性遺伝子群の同定」とその作用機序を明らかにした(Azauma et al.,2018)。 本申請では、本方法を異種・異属間核移植操作に応用し、効率的な異種間クローン胚の作出を行うことで生殖細胞に依存しないユニバーサルな遺伝資源の保存方法を確立する。 アカネズミドナー細胞を用いて作製した融合卵子は、93%(93/100)の卵子が早期染色体凝集を形成した。活性化処理後、78%(78/93)の卵子が前核構造の形成を認め、83%以上が2細胞期胚へ発生した。核移植後の前核期卵子および2細胞期胚を免疫細胞染色した結果、H3K9me3の蛍光輝度は、TSA,VC未処理区と比較して、前核期卵子では有意に上昇し、2細胞期では有意に低下した。さらに、2細胞期胚内におけるH3K4me3の蛍光輝度は、TSA,VC未処理区と比較して低下した。これまでに、同種間核移植由来2細胞期胚は、体外受精由来胚よりもH3K4me3の発現が高いことが知られている(Zhang et al., 2009)。本実験より、アカネズミ-マウス異属間核移植胚内におけるヒストン修飾はダイナミックに変化していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、異種・異属間核移植技術は、その殆どは産児作出までのメカニズムは明らかになっていない。本申請期間において申請者は、新規核移植技術を用いて核移植後、2細胞期へ発生する課題点の一つを明らかにした。 当初の活性化におけるタイミングを詳細に検討していくことは、同種間においても更に検討しなければならず、異種・異属間核移植における本成果を公表することは科学的意義があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、申請者は、異種・異属間核移植によるクローン胚の発生に必要なH3K4me3の変化に着目して進めている。同種間では、ドナー細胞のヒストンリジントリメチル化の維持がクローン胚の正常発生を阻害することが明らかとなっている(Matoba et al.,2014)。同じように、野生マウス由来体細胞(ドナー細胞)への直接的なメチル化メカニズムが異種・異属間での作用機序は明らかになっておらず、今期は、ドナー細胞へのVC処理が異種間クローン胚の発生に及ぼす影響を検討する。 動物園動物の高齢化が進み、繁殖能が低下した個体に関する基礎情報の蓄積として老化マウス細胞を樹立し体細胞核移植におけるクローン胚の作出および遺伝資源保存と核内のリン酸化動態の正常評価の検討を開始する。
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