2023 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring the dissemination processes and conservation methods of useful plants through folk plant nomenclature, folk use, and cultivation characteristics
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18K05696
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
徳岡 良則 愛媛大学, 社会共創学部, 助教 (20442725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 三徳 東京農業大学, その他部局等, 教授 (10354028)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 境木 / 文化伝播 / 在来品種 / 植物方言 |
Outline of Annual Research Achievements |
茨城県内や愛媛、高知の一部と限られたエリアで評価してきた畑地境界に残る境木について、関東および東北地域に調査エリアを拡大し、境木の分布パターンや植栽の歴史に関する文献調査を進め、論文を投稿した。有用植物の伝播過程を推定する手法の検討として、樹木方言および稲品種名の地域間の類似性を定量的に評価した。本検討では愛媛県で収集された樹木と稲品種の呼称を電子化したデータに加えて、気象庁より公開されている各種気象データ、愛媛県の民俗、方言関連地図、焼き畑地域の分布、江戸時代の国境、明治時代の道路網などのデータをデジタル化し解析に供した。解析の結果、樹木と稲のそれぞれで明瞭に異なる方言地図が示された。それぞれの方言の地域区分と相関の高い変数をv-measure解析およびfactor detector解析で検討した結果、樹木方言の地域区分は、日射量や雨量などの地理的要因とより強い空間的関連性を示した。また樹木方言の一つのグループは、焼畑農業地域と重なる傾向が見られ、樹木の地域的な呼称と伝統的な生産システムとの関連を示唆していた。これに対し、稲品種名は民俗の地域区分との関連性が強かった。さらに道路網や、遍路、お伊勢参り、出雲大社巡礼などによる農民の移動が米の在来品種の移動に与える影響も示唆された。これら結果は、人の移動と伝統的な地域の民俗が米の種子の伝播に強い影響を及ぼしてきた可能性を示した。樹木方言、稲品種名の多くは現在の自治体内では類似する傾向があり、また隣接する自治体と共有されているものも多かった。この結果は、野生の樹木や稲品種の生物学的および文化的多様性がどのように地域分布しているかを間接的に示していると考えられた。この成果は、樹木と稲品種の両植物資源そのものやその利用に関わる在来知の保全を自治体間で効率的に協力するための活動範囲の特定に役立つものと期待できる。
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