2019 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of cryopreservation method for plant and microorganism using two members culture
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18K05697
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
田中 大介 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 遺伝資源センター, 上級研究員 (60425593)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 超低温保存 / ガラス化 / 二員ガラス化法 / 微生物 / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
持続的農業環境と生態系の保全をする上で,植物と共生する微生物の存在が重要であると分かってきた.微生物の中には,宿主である植物と二員でなければ生存が難しい種があり,凍結保存による長期保存はさらに困難とされる.そこで,種子で保存できない難貯蔵性植物を液体窒素で急速に冷却しガラス化させることで半永久的に保存する超低温保存技術を応用することを発案した.すなわち、本研究課題では植物組織細胞に微生物を接種し,二員培養を元にガラス化処理する新規超低温保存法「二員ガラス化法」の開発を開発する.地域や種ごとに異なる生物本来の姿を生物遺伝資源として保存し,必要時に宿主ごと融解,再培養,増殖する画期的なシステムの開発を目的に研究をおこなった. ①アーバスキュラー菌根菌の保存法を検討した.共生関係を結ぶゼニゴケの仲間のフタバネゼニゴケをホストとして利用し、絶対寄生菌の保存技術(一菌糸に由来するアーバスキュラー菌根菌の菌糸を単離できる系)の開発を行っている.フタバネゼニゴケを脱水耐性付与処理および脱水処理後,熱伝導率の高い金属製デバイスを用いて液体窒素温度まで急速冷却した結果,高い生存率が得られた. ②卵菌類は、糸状菌で一般的な含菌寒天片を基質とした緩慢凍結法による超低温保存が困難な微生物である.そこで,卵菌を無菌的に植物種子内に侵入させた後,脱水耐性付与処理および脱水処理後,熱伝導率の高い金属製デバイスを用いて液体窒素温度まで急速冷却した。その結果,高い生存率が得られた.さらに,走査型電子顕微鏡による種子内部の観察結果から,卵菌が種子内部まで侵入した方が生存率を向上できることがわかった.そこで,あらかじめ種皮への傷付け処理を人為的に行い,ほぼ100%近い生存・再生が可能になる技術開発に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①アーバスキュラー菌根菌の保存法を検討した.屋外に生息するフタバネゼニゴケ無性芽を採取し材料調整後,超低温保存実験を行った.フタバネゼニゴケを脱水耐性付与処理および脱水処理した後,熱伝導率の高い金属製デバイスを用いて液体窒素温度まで急速冷却した結果,高い生存率が得られた.また,屋外で採取したフタバネゼニゴケ葉状体の液体窒素保存にも成功している.無菌的に培養したフタバネゼニゴケ培養体を増殖させ,無菌フタバネゼニゴケ無性芽で一菌糸に由来するアーバスキュラー菌根菌の菌糸を単離・超低温保存する準備を進めている.一方で,グリセロール,高濃度の糖類をガラス化処理に用いるため雑菌混入による成育阻害リスクが課題になることが懸念される.そこで,滅菌した土壌にアーバスキュラー菌根菌を含有する土壌を少量添加して共生植物(バヒアグラス,クローバー)と二員で培養し雑菌の蔓延を抑えた実験系の確立を進めている. ②卵菌類の保存法を検討した.卵菌を無菌的に植物種子内に接種させ,1ヶ月後に卵菌が侵入した種子ごと脱水耐性付与処理および脱水処理を行い,熱伝導率の高い金属製デバイスを用いて液体窒素温度まで急速冷却した.その結果,ガラス化法で高い生存率が得られることが明らかになった.そこで,走査型電子顕微鏡を用いて種子内部への卵菌が侵入した様子を確認したところ,卵菌が種皮表面までしか侵入していないサンプルよりも,種子の中心(内部)まで侵入しているサンプルで高い生存率が得られた.次に,培養前の種子表面(種皮)に紙やすりで傷付した処理実験をおこなった.その結果,種子への卵菌接種後1週間培養した材料においても高い生存率が得られ、さらに,2週間培養した材料では,100%近い生存・再生し,複数種供試しても同様の結果が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
アーバスキュラー菌根菌の二員ガラス化法を確立する.特殊電子顕微鏡技術を用いて液体窒素で超低温保存した植物細胞および微生物の細胞内微細構造と水(あるいは氷晶)の挙動を明らかにして,植物および微生物が細胞内凍結あるいは脱水傷害を受けない処理条件を探索し高品質で安定した保存技術と新規二員専用ガラス化液の開発を目指す. 超低温保存過程のステップごとの細胞内微細構造を電子顕微鏡で観察し,細胞の反応と水の挙動(氷晶,ガラス化など)の関連を調べる.また,植物細胞内に局在する微生物の挙動と脱水過程の水の動きの関係性を明らかにし最適化することで最適な凍結保護剤の選定および最適な処理濃度の検討を実施する. 今後,ジーンバンク事業で維持している微生物遺伝資源を利用し,保存技術の汎用性作業を行う.
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Causes of Carryover |
テクニシャンを雇用し実験を遂行する予定であったが、該当する応募者が現れなかったため,人件費分を次年度使用することにした.また,屋外の材料を実験に供試しているため,材料調整に時間がかかり,特殊電子顕微鏡による実験など進められなかったことから次年度へ計画を繰り越した.
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Research Products
(1 results)