2019 Fiscal Year Research-status Report
伊茶仁カリカリウス遺跡から出土した焼骨片を用いたサケの太古からの遺伝的履歴の解明
Project/Area Number |
18K05698
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
柳本 卓 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 主任研究員 (30443386)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹羽 洋智 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 主幹研究員 (60372083)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | サケ / 焼骨片 / 伊茶仁カリカリウス遺跡 / コアレセントシミュレーション解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
北海道標津郡標津町にある伊茶仁カリカリウス遺跡で出土した約500年前の焼骨片について、既報の方法でDNAを抽出し、既報の短い断片を増やすプライマーを用いてPCR、更にシーケンス分析を行い、塩基配列が得られた。それらについて、Blast分析を行たところ、16個がサケ、1個がカラフトマスであることが分かった。しかし、約2000年前の焼骨片では実験がうまく行かず、結果が得られなかった。そのため、既報の方法で抽出したDNAについて、全ゲノム増幅法であるiDOP法を行った。そのテンプレートについて、既報のプライマーによるPCR法によって目的DNAの増幅を試みたが、うまく行かなかった。更に、nested PCR法により再度PCRを行ったが、増幅産物は得られなかった。約2000年前の焼骨片のDNAは損傷が激しく、分析をするのは難しいと考えられた。焼骨片が出土してから、時間がたったものをサンプルとして使用しているので、出土後すぐの焼骨片を用いて分析を行う予定である。 焼骨片によるDNA分析がうまく行かなかったことから、過去のサケのサンプルとして2006年に採集されたサケを用いて、2019年に採集されたサケのmtDNAのD-Loop領域の塩基配列分析を行った。今後、これらの塩基配列について、遺伝的な多様性の比較、コアレセントシミュレーション解析を行う予定である。 また、焼骨片がサケ科魚類以外である可能性もあることから、伊茶仁川で採集された魚をサンプリングして、DNAデータベースを作成した。ただ、魚の採集が難しいことから、次年度は環境ゲノムを用いて、生息する魚のリストを作成する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
米国の報告では、約4000年前の焼骨片からのDNA分析を行い、結果が得られている。しかし、伊茶仁川カリカリウス遺跡から出土した約2000年前の焼骨片の分析は非常に難しかった。約500年前の焼骨片や通常の生鮮サケなどでは同方法で問題なく分析できているので、出土後の保存状態などにも問題があるかもしれない。最終年度では、出土後すぐの焼骨片を用いて分析を行う予定である。 また、焼骨片でうまく行かない場合を考えて、2006年と2019年に採集されたサケのmtDNAのD-Loop領域の塩基配列分析を行い、サケの遺伝的な多様性変化を調べる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、出土してすぐの焼骨片を用いて、分析を行う予定である。焼骨片の保存状態の問題を解決できると考えている。 焼骨片からサケの過去のデータが得られない可能性があるので、2006年と2019年に採集したサケのmtDNAのD-Loop領域の塩基配列分析による遺伝的な多様性変化を調べ、検討する予定である。 伊茶仁川で生息する魚のデータベースを作成する予定であったが、魚がうまく採集できないので、環境ゲノム解析を行い、生息魚種のリストを作成する予定である。
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Causes of Carryover |
実験がうまく行かず、今後の検討のため、無理に消耗品を購入しなかった。次年度の研究に効率的に使用する予定である。
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